1Candida本稿では代表的な酵母状真菌であるCandida属による角膜炎について記す。角膜炎を起こし得るCandida属の菌種にはC. albicans,non-albi-cans Candida属としてC. parapsilosis,C. trop-icalis,C. glabrataなどがある。このうち特に角膜炎の原因菌として頻度が高いものはC. albi-cansとC. parapsilosisの2種類である1)。通常,Candida属菌は酵母形と菌糸形の2つの形態をとる。粘膜表面では酵母形として存在するが,組織内に侵入した場合には菌糸形(仮性菌糸)になることが多い。すなわち,検体から菌糸形を観察することができれば,その菌が原因菌である可能性が高い。ただし,C. glabrataのみは菌糸形をとらない2)。このCandida属は正常眼の結膜嚢からも時に検出されることがあるため,角膜所見と照らし合わせて原因菌がどうかの判断が必要となる。また,頻度は低いと思われるが結膜炎も起こし得る3)。2検 査図1にCandida角膜炎に限らず,角膜感染症1047の一般的な治療方針についてフローチャートでその一例を示す。所属施設により当然選択肢は異なると思われるが,所属施設で施行可能なものについてはできるかぎり初診時に行う。初診時に既に薬物が投与されている場合は止むを得ないが,薬物を投与する前に必要な検査を必ず施行することが肝要である。いったん,薬物投与を始めると,原因菌の検出率は低下する。Candida角膜炎を疑う場合,問診では特に,ステロイド点眼薬の投与歴,角膜移植などの角膜手術歴,他の眼科手術に伴う角膜における術創の有無,緑内障点眼薬の投与歴,幹細胞疲弊症の有無,全身疾患としてアトピー性皮膚炎,糖尿病,悪性腫瘍などの有無を聞く。春季カタル4)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の有無も確認する。オキュラーサーフェスにおける免疫抑制状態や手術も含めた眼外傷の既往などが全くない正常の場合,Candida角膜炎が発症することは珍しい。多くの症例において角膜移植や種々の眼疾患に伴うステロイド点眼の投与歴や角膜上皮のバリア機能が障害されるような契機(外傷や角膜手術,複数の緑内障点眼薬の投与中など)を認める5)。Candidaと同じように眼局所における免疫抑制下で角膜炎を発症しやすい病原体としてMRSAやHSV-1などがあるので,複合感染の可能性も含めて常にそれらとの鑑別が必要となる。初診時に前眼部写真で角膜病変を正確に記録し,細隙灯顕微鏡により病変を丹念に観察する。これ*NaoyukiYAMADA 山口大学医学部眼科学教室K ey words : Candida albicans,Candida parapsilosis,前眼部OCT,共焦点顕微鏡検査,シフトPKP,部分的周辺部強角膜移植山田直之*角膜真菌症アップデート4酵母菌感染症
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