2涙小管炎 1 病態図5左MRSA角結膜炎充血,眼脂,角膜血管侵入,角膜白斑がある。真菌の感染も混在している。片眼性の難治性結膜炎,②多量の粘液膿性の眼脂,③涙点の拡大と腫脹,④涙小管の拡張,⑤菌塊(菌石)の摘出,⑥菌塊に放線菌の証明を挙げている。放線菌はグラム陽性の嫌気性菌で,口腔内に多く存在し,細胞が菌糸を形成する。菌糸の幅は1μm以下で真菌より細く,菌糸が絡みあい菌石を作る。涙小管炎20例の報告では菌糸を検鏡で全例認め,嫌気性培養では放線菌は9例のみであったと報告している15)。培養検査では,嫌気性菌は放線菌の割合が高い(79%)が,ひとつの眼から好気性菌や嫌気性菌などの複数の菌が培養され,原因菌の同定は容易ではないとの指摘がある16)。 2 臨床像と所見患者は片眼の眼脂を訴える。抗生物質の点眼で一時的に改善するが,再発を繰り返す。細隙灯顕微鏡でみると,結膜全体の発赤があり,その中に小型の乳頭増殖を伴う特徴的な結膜炎17)がある(図6)。結膜小型乳頭はリンパ球が主体であり18),慢性炎症も関与していると考えられる。充血の強い急性炎症と慢性炎症が同時に起きている結膜炎涙小管炎の診断の要点について亀山ら14)は①所見である。涙点は充血,拡大,隆起などしている。涙点の中に膿や菌石,ポリープが観察できることもある(図7)。涙管洗浄では,菌石や膿が逆流して出てくる。通水が可能なことも多いが,ポリープのために出血しやすい。菌石が出てきた場合はスライドグラスで挟んでつぶして検鏡を行うと良い15)。菌石をホルマリン固定して病理組織検査を行うこともできる(図8)。好気性・嫌気性培養については前述のとおりである。 3 治療涙点鼻側切開して涙小管内の菌石をすべて出すことが重要である。涙点から挿入した拡張針をまな板がわりにして,4〜5mm大きく切開する。眼瞼を総涙小管側から鑷子で挟んで圧出すると菌石が出てくる。また,涙点を広げながら涙管洗浄をすると菌石が出やすい。涙道内視鏡は,涙道内の残存菌石を確認する19)ときに便利である(図9)。いわゆる「掻破」として鋭匙を涙小管に入れて中を掻き回すと,涙小管内に多数できているポリープを傷つけて出血し,粘膜を損傷するので行わない。全身的な放線菌症の場合はペニシリン系抗生物質を8週間〜1年間使用することもあるというが,涙小管炎の場合は菌石をすべて出し,抗生物質の点眼を使用しながら,週1回程度の涙管洗浄154図6右上涙小管炎の下眼瞼結膜結膜の充血および小乳頭の増殖がある。
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