図3両側涙囊皮膚瘻瘻孔部が発赤,腫脹している。図4右急性涙囊炎A:穿刺する部分と周囲にペンレスⓇテープを貼り30分程度待つ。B:穿刺している状態。涙囊皮膚瘻,急性流行性角結膜炎,点眼アレルギーなどである。腫瘍に関しては涙道と交通があるかは涙管洗浄をしながら腫瘤を触って,ふくらみの変化や,粘液や膿の逆流をみる。画像診断も有効である。涙小管炎は下記する。涙囊皮膚瘻は,涙囊や涙小管から皮膚につながる瘻孔が開放している疾患で,鼻涙管閉塞を合併することもある。時々目頭部分に炎症を起こす(図3)。急性流行性角結膜炎や点眼アレルギーなどでも腫脹が強くなると,急性涙囊炎と似た所見を伴うことがある。炎症の中心が涙囊部であるかどうかよく観察すること,問診,アデノウイルス検出キットの使用,涙管洗浄,画像診断などで鑑別できる。 3 治療急性涙囊炎の場合は抗生物質での保存的治療を基本とする。起炎菌にもよるが,一般的な抗生物質の点滴で対応できることが多い。グラム陽性菌ではセフメノキシム,グラム陰性菌ではオフロキサシンの耐性率が低いという報告がある11)。また抗生物質の点眼,腫脹部への抗生物質の軟膏塗布も行う。皮下膿瘍が皮膚に自壊しそうなときや,腫れが強いときは切開排膿を行う。ペンレスⓇテープを貼り(図4A),30分ほど待ってはがし,皮膚消毒のうえ,メスで膿の中心を切開し排膿する。穿刺吸引をする場合は20〜23ゲージ程度の針で皮下膿瘍部や涙囊部を穿刺し,膿を吸引する(図4B)。急性期でのブジーは,仮道形成や蜂巣炎を引き起こすことがあり,行うべきではない。急性期を脱した後,根治療法として涙道再建手術(涙囊鼻腔吻合術,涙囊摘出,涙管チューブ挿入術等)が必要である。「やりたくない」と高齢者にいわれると,ついかわいそうになり,手術を強く勧めないことが,筆者もある。10年以上手術を拒否した患者がMRSA結膜炎を起こした症例を紹介する。日々消毒し,バンコマイシンなどの点眼を使用しているが著効せず,両目から膿があふれだした状態で1年以上が経過し,角膜もすっかり濁ってしまった(図5)。このような患者を二度と作りたくない。153Vol.58 No.2 2016AB
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