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図2左慢性涙囊炎CT冠状断右と比較すると左の涙囊が膨らんでいる。ロテウス,インフルエンザ菌などの単一病原菌によるものが多い。MRSAの検出もある10)〜12)。ムコスタⓇ点眼液による涙囊炎も報告されている13)。ムコスタ粒子が凝集したものや,粘性の高い液状になったものや,白色の膿が涙囊の中にできる。ホウ酸との関連も指摘されているが,詳細は不明である。また,その異物自体が鼻涙管閉塞や涙囊炎の原因となり得るのかについても不明である。 2 臨床像と所見涙囊炎は40歳以上の女性に多い。患者自身が習慣的に目頭を圧迫して,内容物を出していることも多い。慢性涙囊炎では目頭が少し腫れていることもあるが,一見わからないことも多い。急性涙囊炎では,目頭を中心として腫れる(図1)。疼痛を伴い,熱発することもある。皮膚が自壊して皮膚瘻ができることもある。細隙灯顕微鏡で観察すると涙液に濁りがあり,角膜炎や結膜炎を伴うことがある。慢性涙囊炎では目頭の部分を圧迫すると涙点から透明な粘液や膿が逆流してくる。急性涙囊炎の場合は大きく腫れあがった涙囊のために総涙小管が屈曲し,涙点から入れるものは涙囊に入るが,涙囊からは涙点に涙や膿が戻ってこない「チェックバルブ現象」が起きることも多い。目頭を押しても膿の逆流がないからといって涙囊炎でないと結論付けてはいけない。CTやMRIでは肥大した涙囊や鼻涙管がわかる(図2)。画像診断を依頼すると,慣れていない施設では涙囊炎であるのに腫瘍と診断されることもあるので注意する。涙管洗浄では,涙囊のあたりを軽く触りながら行うと,入れた水で涙囊が膨らむ様子がわかる。慢性涙囊炎の場合は軽く涙囊部を圧迫すると涙囊から目に,粘液や膿が逆流してくる。急性涙囊炎の既往がある場合,涙囊壁が薄く,破れやすいので強すぎる圧迫は禁物である。急性涙囊炎の場合は,周囲に膿や炎症を広げてしまう可能性もあり,涙管洗浄は行わない。急性涙囊炎の際は,採血で白血球やCRPの増加を伴うこともある。肝機能,腎機能検査のスクリーニングの採血とともに,行っておくと良い。糖尿病やステロイドの使用,透析患者,免疫不全状態の患者の場合は敗血症に進展することもあるので,全身的な病歴にも注意する。眼脂あるいは涙点や皮膚瘻からの膿を培養する。好気性および嫌気性培養と,感受性の有無を調べる。塗抹検鏡も行っておくと良い。鑑別診断は,鼻根部や目頭の腫瘍,涙小管炎,152図1左急性涙囊炎目頭から目周囲が腫れ,右側の健側に鼻根部が曲がり,左目が健側の右目より上にずれているように見える。

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