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図4MRSA角膜炎59歳男性。生来健康である。角膜中央部に類円形の境界明瞭な感染巣を認め,前房蓄膿と上方周辺部に免疫輪様の細胞浸潤を伴っている。角膜鉄粉異物除去後に発症し,眼脂からMRSAが検出された。図5白内障術後眼内炎における起炎菌の内訳MRSAによるものは12.2%,MRSEによるものは17.1%であった。(図5)。MRSAによるものは術後2〜4日の早期に,MRSEによるものは術後数日から1週間前後に生じることが多い。自覚症状としては霧視,視力低下が多く眼痛は少ない。臨床所見としては前房内フィブリン形成や前房蓄膿,硝子体混濁を認める。MRSA眼内炎は視力予後不良といわれている。4治 療現在,日本で抗MRSA薬として承認されている薬剤はバンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン,リネゾリド,ダプトマイシンである。これらはMRSAに対する特効薬ではあるが,感受性検査の結果をみて他の抗菌薬に対して感受性があれば先にそちらを使用する。クロラムフェニコールやエリスロマイシンが有効であることがある11)(図6)。また,薬剤感受性試験結果が耐性であっても,眼表面は高濃度の点眼薬を頻回に直接感染巣に作用させることができるため,臨床的に有効で感染コントロールが可能であれば,MRSAが検出されても急いで薬剤を変更する必要はない。症状や所見のない保菌者は治療の必要はないが,手術侵襲が加わると感染の原因となるため,術前症例に関しては除菌のうえ手術を行うことが望ましい。Moraxella 2.4 %P. acnes 2.4 %S. aureus 2.4 %α-Streptococcus4.9 %E. faecalis12.2 %その他17.1 %CNS/S. Epidermidis29.3 %MRSE17.1 %MRSA12.2 %(文献10より改変)MRSA涙囊炎は全体の12%程度を占め,患者の平均年齢は84歳で非MRSA涙囊炎患者の72歳に比較し有意に高齢で女性が多かったと述べている9)。涙囊へは抗菌薬が局所,全身投与ともに届きにくいため,病原微生物の排除が困難で,根本的治療には涙囊鼻腔吻合術や涙囊摘出術が必要となることが多い。 4 眼内炎白内障術後眼内炎の発症率は本邦では0.052%と報告されており,そのうちMRSAによるものは12.2%,MRSEによるものは17.1%である10)140現在バンコマイシン眼軟膏1%が市販されているが,耐性菌の出現を避けるため使用には一定の基準がある。適応菌種はバンコマイシンに感性のMRSAとMRSEであり,既存治療で効果不十分な結膜炎,眼瞼炎,瞼板腺炎,涙囊炎が適応疾患である。1日4回塗布し,投与期間は14日間以内で,継続投与は避ける。角膜上皮障害の出現に注意が必要である。処方するためには所定の登録シートとともにMRSA,MRSEの培養結果を症例登録センターにFAXし,薬剤取り寄せのうえ使用が可能となる。角膜炎はバンコマイシン眼軟膏の適応疾患となっておらず,また本製剤は手続

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