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図2MRSA結膜炎6歳男児。両眼性の結膜充血と黄色眼脂を認める。兎眼性角膜炎を合併している。寝たきりで気管切開孔があり,喀痰からもMRSAが検出された。図3MRSA角膜炎(京都府立医科大学横井則彦先生のご厚意による)A:43歳男性。アトピー性角結膜炎,急性水腫にMRSA角膜炎を合併した。角膜下方に表層性の淡い浸潤巣を認める。B:同症例のフルオレセイン染色。上皮欠損は軽度である。急性水腫のため高度の角膜浮腫を伴っている。3眼感染症MRSA感染症に特徴的な所見はなく,見た目だけでMRSAと判断することはできない。病巣から得られた検体の培養・薬剤感受性試験結果と,起炎菌であると判断するに足る眼臨床所見,患者背景から総合的に診断を行う。 1 結膜炎,眼瞼炎ABニューキノロン系抗菌薬と副腎ステロイド薬投与中,アトピー性皮膚炎患者が多いなどの因子があり,ハイリスクである。移植術後数か月から2年以内の発症が多い。また,翼状片手術や水疱性角膜症,再発性角膜びらんなど,角膜上皮障害が生じた部位に無症候性に存在していたMRSAが増殖し,発症することがある。エキシマレーザーによる屈折矯正手術後に発症する症例は医療関係者に多いと報告されている8)。フラップ下に感染巣が生じるため薬剤が移行しにくく難治性で重篤である2)。 3 涙囊炎多くは慢性涙囊炎の形で生じる。児玉らは,139Vol.58 No.2 2016また,臨床的には標準的抗菌薬治療に反応しない場合,MRSAもしくは真菌感染を疑う。通常の抗菌薬点眼で改善に乏しく,前述のような患者背景があれば疑う。眼脂の塗抹検鏡,培養感受性検査を施行し,診断する。結膜炎では黄白色の眼脂を伴う(図2)。眼瞼炎は睫毛根部にフィブリン様の膜様物が付着し,collaretteと呼ばれる所見を呈する。鼻腔,喀痰など身体の他部位からMRSAが検出される患者では結膜囊内MRSAの陰性化は困難であり,結膜炎を治療してもすぐに再発することがある。 2 角膜炎通常の黄色ブドウ球菌による角膜炎の特徴と同じく,類円形の境界明瞭な感染巣を生じる(図3,4)。角膜移植術後は縫合糸が感染の足場となる,

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