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2病 態 1 グラム陰性菌「なぜ緑膿菌か?」2細菌性角膜潰瘍1疫 学本症は原則として何らかの角膜上皮損傷を契機として発症する。往時は角膜異物,外傷の既往が契機として多かったが,昨今はもっぱらコンタクトレンズ装用による角膜上皮障害が主要な位置を占めている。明瞭な誘因としてはステロイド剤の長期点眼があるが,思わぬ伏兵として注意すべき背景因子に眼手術既往がある。これは意外な盲点であり,特記しておきたい。外眼手術であれ,内眼手術であれ眼の手術歴自体が,既に角膜に対する易感染要因となる。*HiroshiHATANO ルミネはたの眼科(藤沢市)K ey words :角膜潰瘍,コンタクトレンズ,緑膿菌,アカントアメーバ,PK/PD,キノロン薬表1に戦前・戦後の角膜潰瘍の起炎菌の世界的趨勢について示した。概括すると往時はグラム陽性菌が多く,昨今はグラム陰性菌が多い傾向が観察される。この変化の理由は不明だが,1つには化学療法の普及,2つにはコンタクトレンズの影響が考えられよう。図1は最近,日本眼感染症学会が実施した感染性角膜炎の全国サーベイ1)にみられた患者の年齢分布である。明瞭な二峰性が観察されるが,最も多い年齢区分は20歳代である点が注目される。特に,図中水色の部分がコンタクトレンズ関連であり,コンタクトレンズ管理がきわめて重要である。表2は宇野ら2)が上記サーベイ後に実施した重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査の結果である。重症という意味は入院を要した患者がsubjectであるという意味である。全体の平均年齢は28歳ときわめて若く,使用されていたコンタクトレンズタイプは56%が2週間頻回交換型SCLであった。検出菌の内訳をみると圧倒的に緑膿菌とアカントアメーバである。コンタクトレンズ関連の感染は,上述のとおり緑膿菌が際立って多い。レンズの稚拙な管理と,低酸素症を含めた角膜上皮の微小外傷とが組み合わさった結果である。連統装用により多い。ケアキットの中から多くのケースで緑膿菌とアカントアメーバが検出される。ここで改めて,CL関連角膜感染症は緑膿菌がダントツである理由を考えてみたい。その1は図2のように,本菌が最たる環境菌であることである。目と保存ケースを行ったり来たりするうちに環境から角膜に取り込まれるからである。同じ意味で多いのがアカントアメーバである。したがって,本当の意味で繰り返し使用しない使い捨てタイプでは,環境菌感染は少なく,常在菌感染が増加する。これは図3に示したサーベイでも観察されている事実である。その2は,本菌がきわめて特異な悪環境へのし125Vol.58 No.2 2016秦野 寛*特集眼の細菌感染

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