1. 造血・鉄代謝・血球・血液成分 491
答 問106:1,4,問107:3,問108:2
〔関連事項〕フェリチンは水溶性であり,血清中に存
在し,血清中の濃度から貯蔵鉄の状態を推測できる
ため,貯蔵鉄欠乏の有無を判断する際に有効な指標
となる。
問 106★
【Ⅵ─2─C】(ID 2009061)
血小板について正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 核を持たない。
2. 腎臓で主に崩壊される。
3. ミトコンドリアを含まない。
4. 粘着,凝集および放出機能がある。
5. 濃染顆粒はフィブリノゲンを多量に含む。
作問のねらい 血小板の光学顕微鏡での形態,電
子顕微鏡での超微細構造,機能,顆粒(濃染顆粒,
α顆粒)成分,崩壊について記憶している必要があ
る。
〔注解〕 血小板は骨髄中の巨核球から産生され,1.
直径2〜4μmの核のない血球(巨核球の細胞質片)
で,4.粘着,凝集,放出機能がある。
3.小器官として,ミトコンドリア,α顆粒,濃
染顆粒,グリコーゲン粒子などが散在しており,こ
れらを細線維が取り囲んでいる。α顆粒には血小板
第3因子,第4因子,β─トロンボグロブリン,フィ
ブリノゲン,血小板成長因子などが含まれ,5.濃
染顆粒にはセロトニン,ATP,ADP,カルシウム
イオンなどが含まれている。血管内寿命は7〜10
日で,2.脾臓で破壊される。
〔関連事項〕血小板の細胞質に含まれる収縮性の蛋
白であるアクトミオシン(トロンボステニン)の作
用で,血液凝固後の血餅は収縮し強固になる。
問 107★
【Ⅵ─2─A】(ID 2009159)
ヘム合成系に直接関与するビタミンはどれか。
1. 葉 酸
2. ビタミンA
3. ビタミンB
6
4. ビタミンB
12
5. ビタミンK
作問のねらい ヘモグロビン合成について,ヘム
合成の場,合成の際に必要な物質,ビタミンの種類
を問う。
〔注解〕 ヘモグロビンのヘムは,プロトポルフィリ
ン環の中心に2価の鉄原子が結合したものである。
プロトポルフィリンは,アミノレブリン酸(δ
ALA)を材料としてミトコンドリアで合成される。
アミノレブリン酸は,グリシンとサクシニルCoA
を材料として,3.ビタミンB
6
を補酵素とする合成
酵素により合成される。
2.ビタミンAは鉄の吸収や鉄利用に関連すると
いわれ,ビタミンA欠乏症では慢性疾患に伴う貧
血のような小球性貧血を呈すると報告されている
が,不明な点も多い。
1.葉酸と4.ビタミンB
12
は赤血球や神経細胞の
DNA合成に必須であり,欠乏すると赤血球の産生
に支障をきたし,巨赤芽球性貧血を引き起こす。
5.ビタミンKは肝臓で合成されるビタミンK依
存性凝固因子(FⅡ,FⅦ,FⅨ,FⅩ)や,ビタミン
K依存性凝固抑制因子(プロテインC,プロテイン
S)などの合成に不可欠である。
〔関連事項〕グロビンの生合成は赤芽球の細胞質内
のリボソームで行われ,ヘムを取り込んで重合して
4量体のヘモグロビン分子となる。
問 108★★★
【Ⅵ─1─B】(ID 2010059)
健常成人女性の血液で誤っているのはどれか。
1.血液粘度 4.5
2.全血比重 1.071
3.血漿比重 1.025
4.循環血液量 82mL/kg
5.ヘマトクリット 41%
作問のねらい 血液の性状について,循環血液
量,血液の比重,血液の粘度の基準範囲(男女)を
記憶している必要がある。
〔注解〕 1.血液の粘度(比粘度)は,ガラス管内を
流れるときの管壁の間に生じる摩擦を,蒸留水と血
液の比で表したものである。全血の粘度は,およそ
4.2〜4.8で,性差があり女性はやや低い。血液粘
度は,①赤血球数の増加,②血漿蛋白質濃度の上昇,
③血液水分量の減少などにより高くなる。
2, 3.全血の比重は,およそ1.05〜1.06で,性差
があり女性はやや低い。全血比重1.071は高値であ
る。血漿の比重は1.025〜1.029,血清の比重は
1.024〜1.028で,主として蛋白濃度と相関する。
4.体内を流れる血液の量には個人差があるが,
通常成人の場合,体重の約8%といわれている。例
えば体重50kgの人では,約4,000mLの血液が体内
を流れている。
5.全血中に占める赤血球の容積比をヘマトク
リット(Ht)といい,男性45%,女性40%程度であ
る。
〔関連事項〕循環血液量は循環血球量と循環血漿量
を合計したものである。体ヘマトクリット(%)は循
環赤血球量×100(%)÷循環血液量で計算され,ミ
クロヘマトクリット法などで測定される静脈血ヘ
マトクリットよりもやや低値を示す。
9