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内の静脈との圧差で流れているが,自発呼吸の吸
気時は胸腔内は陰圧となるためこの圧差が広が
り,血液は流れやすくなる。
人工呼吸では吸気時に胸腔内圧が上昇するた
め,この静脈還流が障害される可能性がある。こ
のため,とくに脱水や出血などで循環血液量が減
少した患者に血圧低下や心拍出量の減少がみられ
る。心拍出量の減少は重要臓器に血流の減少を起
こし,臓器機能の低下にもつながる。例えば,人
工呼吸中に尿量の低下がよくみられるが,これに
は血流の減少そのものが原因であったり,心拍出
量の低下が抗利尿ホルモン(
ADH
)の分泌を促進
するなどの機序が考えられている。
b)肺への影響
呼吸不全といっても病変は肺全体に均等に起
こっているわけではなく,病変の強いところや正
常に近いところが入り混っているのがふつうであ
る。急性肺傷害(
acutelunginjury
)や急性呼吸促
迫症候群(
ARDS
)などでは,肺胞が正常に近く開
いているところもあるが,肺の病変の強いところ
では肺胞が虚脱しており,一度虚脱した肺胞を開
いて換気するために大きな圧を必要とすることが
多い。しかも,これら病的肺胞は呼気時には再び
虚脱してしまう傾向がある。
この高い圧では肺の正常部分は過剰に膨張する
だけでなく,周辺の病変部との組織の擦れが起こ
り,肺組織が破壊されることもある。また肺側胸
Ⅰ.生体機能代行装置学
349
Ⅰ
生
体
機
能
代
行
装
置
学
第
編
図5
換気と酸素化の障害
(文献
1
より引用)
正常な肺胞では換気と肺胞を取り巻く毛細血管の血流の比(換気血流比,
V
̇
A
/
Q
̇)が
0
.
8
程度でちょうどよいが(
a
),
肺胞が虚脱して,血流はあるが換気が全くない(
b
)
,血流に比べて換気が少ない(
c
)
,換気はあるが血流がまったく
ない(
d
)肺胞などが増えてきてガス交換が障害される。
図6
自発呼吸および人工呼吸時の肺内圧と胸腔内圧の変化
(文献
3
より引用)