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の間で二酸化炭素と酸素のやり取りを行うことで

ある(図2)

。ガスの移動する経路は口腔または鼻

腔,気管,さらに気管支,細気管支など

23

回ほど

の枝別れを経て各肺胞に至る(図3)

。これは胸郭

という密閉された容器の中に風船のような肺が収

まっている状態に似ており,胸郭が拡張すると肺

と胸郭の間は気にてとなり(胸腔

内)

,肺は受動的に膨らむことになる(図4)。

安静呼吸では吸気時に吸気筋(横隔膜や傍胸骨

肋間筋など)が収縮,呼気時にはこの吸気筋が

弛緩することで胸郭は元に戻る(腹筋,肋間筋な

どの呼気筋は運動時,呼吸困難時などに活動が増

加するが安静時には活動はわずかであるので,通

常の呼気は吸気筋の弛緩た状態と考えてよい)

この呼気終了時に肺に残る空気量(機能的残気量

または

FRC

と呼ぶ)は,縮もうとする肺とこれに

抵抗する胸郭の弾性の綱引きで決まる。

b)換気と酸素化の障害

呼吸は,この胸郭の運動が障害されても(換気

障害=二酸化炭素が蓄積する状態)

,また気道や

肺の病変で肺胞と毛細血管のガス交換が障害され

ても正常に機能なくなる(酸素化の障害と換気

障害が同時に起こる場合もある)

この機能障害を補う目的で行われるのが�人工

呼吸

�である。前者の典型的な例では,脊髄疾患

や骨格筋疾患で呼吸筋の筋力低下や麻痺があった

り,また急性呼吸不全では呼吸仕事量が極端に増

加,呼吸筋の疲労が起こるため一時的に休める

目的などで人工呼吸が行われる。

後者では肺炎や肺水腫などで肺胞が虚脱,酸

素化が障害されるため,虚脱た肺胞を開く目的

や,慢性閉塞性肺疾患と呼ばれる末梢気道の狭窄

がガス交換を障害する原因になった場合に(換気

障害と酸素化の障害が同時に起こる)

,この状態

が改善するまで呼吸を補助する目的などで行う

(図5)

。実際には肺障害に呼吸筋疲労が重なるな

ど,この二つの障害が共存することが多い。

以上を整理すると「人工呼吸の目的」は以下の

とおりとなる。

①虚脱した肺胞を開き,肺での血液の酸素化を

改善する。

②換気を補助して動脈血二酸化炭素分圧

(P

a

CO

2

)を正常化する。

③肺の状態が改善するまで疲労した呼吸筋を

補助し,呼吸筋力の回復をはかる

(神経・筋疾患

で呼吸筋麻痺がある場合は半永久的人工呼吸とな

Ⅰ.生体機能代行装置学

347










図3

気道の分岐

(文献

2

より改変引用)

A

:肺胞,

:混合静脈血

図2

正常な肺胞でのガス交換と肺胞,血液のガ
スの分圧