4章.機能的自立度評価法(FIM)採点例110 Aさん(81歳,女性)は,特別養護老人ホームに入所していたが,約4カ月前に意識障害,右片麻痺が出現し,救急病院に搬送され,CTにより左視床出血と診断された。運動麻痺,感覚障害の程度は重度であり,失語症を呈していた。救急病院で約2カ月加療後,当院の回復期リハビリテーション病棟へ転入院となった。当院入院時は上肢重度,下肢中等度の麻痺(SIAS:上肢0,0,下肢3,2,2)が残存し,表在感覚,深部感覚ともに重度鈍麻であった。 転院後,2カ月後のある1日の様子である。《6:30》 センサーマットのアラームが鳴ったため,看護師が訪室すると,Aさんがベッドの上で起き上がり,もぞもぞしていた。Aさんは,立ち上がりの際に身体を引き上げてもらう必要があるため,ベッドから車椅子への移乗が1人では困難であった。しかし,ナースコールを使用せずに1人で立とうとすることがあり,センサーマットを使用していた。看護師:「どうされましたか?」Aさん:「あの……,なんかね……」看護師:「トイレですか?」Aさん:「トイレですか? トイレですかって?」 看護師の問いかけに,Aさんは困惑した様子で繰り返した。看護師:「便が出ましたかね。オムツを替えましょうか? ……オムツ,オムツ,替えますよ」Aさん:「そうねえ,オムツ替えるわ」 Aさんは毎日排尿を失敗しており,尿意を訴えるといった失敗を減らす手伝いもしていない。排便には下剤を使用しているが,自力では出にくいため,毎回浣腸をしてもらっており,失敗は週1回未満である。看護師によるオムツ交換では,ズボンを上げることは行っている。オムツ交換が終わり上着とズボンを着替えたが,Aさんが自分で行えるのは,上着の左袖を通すこととズボンを上げることのみであった。本患者の背景ある1日の様子 患者181歳,女性(脳出血)
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