75056T
8/11

コスト評価,臨床適応性・コスト評価「がん患者リハビリテーション料」は入院中の実施であれば術前から算定可能であり,術前からの摂食嚥下療法の説明は,予想される機能予後(摂食嚥下障害など)に基づいた計画立案に有効である。入院中の術後摂食嚥下療法は一般的な療法時間(40〜60分)において患者のコスト負担は少なく実施できる。退院後の外来では「がん患者リハビリテーション料」は算定ができない。・臨床適応性 患者の価値観・希望術後の摂食嚥下療法は,他の医学的治療に比べても一般的に害が少なく益が大きい治療であるため,多くの患者が行うことを希望すると考えられる。特に摂食嚥下障害は日常生活に支障をきたし,多くの患者が摂食嚥下療法を行い,早期に安全な経口摂取の再獲得を目標とすることが想定される。誤嚥に注意して実施すれば,確実性は高く,多様性は低い。・評価舌がん術後患者46名を看護師による摂食嚥下療法群23名(1日30分,週6回,2週間)と対照群23名に分けたZhenら3)の非ランダム化比較研究では,QOLをMDADI(M.D. Anderson Dysphagia Inventory)scoreで評価しており,摂食嚥下療法群の方が有意な向上を示していた(p<0.01)。前述のAhlbergら2)の観察研究では,EORTC QLQ-C30で評価した75名の6カ月後のQOLには有意差は認めなかった(p=0.29)。・統合観察研究が主体かつバイアスリスクと非直接性を認めたため,エビデンスの強さはDとなった。③摂食嚥下療法によってもたらされる肺炎などの有害事象(害:重要性7,エビデンスの強さ:D)前述の文献において,摂食嚥下療法経過中における肺炎などの有害事象の記載は認めなかった。術後の摂食嚥下機能回復に向けての摂食嚥下療法の必要性は一般的に想定されるものである。さらに入院中であれば,治療前から主診療科の医師・リハビリテーション科医・リハビリテーション療法士(言語聴覚士等)が機能障害についての説明を行い,術後に専門的な摂食嚥下療法を監督下で行う体制は普及している。術後早期の回復が期待できるこのような摂食嚥下療法の臨床適応性は高い。CQ 0257CQに対するエビデンスの総括重大なアウトカムに関する全体的なエビデンスの強さ:D(とても弱い) 益と害のバランス評価益(望ましい効果)として,今回の検討において摂食嚥下療法は一部分で有効であった。一方,害(望ましくない効果)として,摂食嚥下療法による有害事象(肺炎の増加,口腔内の疼痛など)は報告がなく,害が生じるリスクは少ないと考えられる。以上より,益と害のバランスは確実である。

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る