145

Ⓐ バランスとは

 バランスとは「均衡」,「釣り合い」などと訳され,「色のバランス」や「バランスのとれた食事」な
ど,日常的に馴染みのある言葉であるが,理学療法でバランスといえば「平衡」,「姿勢制御」のことで
ある。このバランスには,体性感覚,視覚,前庭迷路系の感覚などの情報に対するフィードバック調節,
素早い反応を要する場合はフィードフォワードによる予測的姿勢調節が利用される。さらに,姿勢反射
や反応を中心とした神経機構,実際に筋を収縮させたり構えを変えたり(カウンターウエイト,カウン
ターアクティビティ,足関節方略,股関節方略など)する効果器である運動器の働きにより実現してい
る。
 バランスには静的バランスと動的バランスがある。静的バランスとは,支持基底面の中で重心をいか
に安定させるかというものであり,動的バランスとは,支持基底面そのものや重心の位置が変化する中
で,いかに平衡を保つかというものである。

Ⓑ バランスの評価

 バランスの評価では,実際に平衡を崩すような,重心の移動を伴う課題を与え,それに対するパ
フォーマンスを評価するものが多いが,前述のように神経系(感覚機能,反射・反応など),運動器系

(筋力,関節可動域など)と合わせて評価する必要がある。

 姿勢反射検査の平衡反応や脳神経検査の前庭機能検査はそれぞれの章で述べるとし,本章では特別な
機器を使わない,以下の評価法について説明する。すなわち,静的バランス評価では①Romberg試験,
②Mann試験,③片足立ち検査,動的バランス評価では④機能的上肢到達検査(functional reach test,
FRT),⑤timed up and go test(TUG),さらに静的要素,動的要素を含む総合的バランス指標である
⑥ベルグ・バランス・スケール(Berg balance scale,BBS)を取り上げる。
 全体的な注意点として,立位,坐位,歩行時などバランステスト中に被検者が転倒する可能性も高い
ことから,バランスを崩した時に被検者をすぐに支えられるように,検者あるいは補助者は,必ず被検

Ⅰ.バランス

バランステスト

9

各 論

基礎-共通

バランス機能について理解し,検査法および評価法を身につける

①静的バランスと動的バランスについて説明できる
②Romberg試験を実施できる
③Mann試験を実施できる
④片足立ち検査を実施できる
⑤機能的上肢到達検査を実施できる
⑥timed up and go testを実施できる
⑦ベルグ・バランス・スケール検査を実施できる
⑧異常所見を記録し,考察できる

学習目標

行動目標