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1.日常生活活動(動作) (ADL)とは
日常生活活動(動作)はADLと呼ばれ,その評価方法としてFIM,Barthel indexが頻用される。
ADLの評価は患者の状況把握,訓練効果判定,帰結予測などに活用されるが,順序尺度であることに
留意が必要である。FIMの短縮版,社会的不利の評価方法についても解説する。
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日常生活活動(動作)
(ADL)とは
日常生活活動(動作)
は,
activities of daily living
の日本語であり,
ADL
と呼ばれることが多い。
今田によれば
1)
,ADLの概念はニューヨークの
Institute of the Crippled and DisabledのDever
とBrownが1945年に生みだし,ニューヨーク大
学のRuskとLawtonが発展させたとされている。
ADLは,食事をする,着替えるなど,行われ
なければ立ちゆかない日常の生活上の活動や動作
を指す。この時の環境設定は独居ではなく,食事
などは出てくる施設や病院のイメージである。日
常の生活の示す範囲の解釈が人によって変わるの
は評価方法として困るため操作的な定義が存在す
る。日本リハビリテーション医学会では1976年
に「ひとりの人間が独立して生活するために行う
基本的な,しかも各人ともに共通に毎日繰り返さ
れる一連の身体動作群をいう」と定義している
2)
。
WHOによる1980年の国際障害分類では障害を
機能障害
,
能力低下
,
社会的不利
に分ける
3)
。そ
の中の能力低下レベルがこのADLにほぼ該当する。
このモデルに沿ってADLを考えると以下のように
なる。麻痺や筋力低下などの機能障害をもつと,
結果的にADL低下をきたす。ADLの改善のため
には,筋力増強訓練を行うなど機能障害を改善さ
れるのが1つの方法である。麻痺や筋力低下があ
るなりの動作法を習得したり,装具・自助具を用
いたりするのがもう1つのADL改善方法である。
さらにADLが自立していなければ,それは社会
的不利の原因になる。
ADLという概念がリハビリテーション(以下リ
ハ)において重要視されるのは,機能障害の改善
する疾患においても,機能障害自体は改善しにく
い疾患においても,ADLに着目することでリハ
の成果がわかるためであろう。ADLに近い概念
として,
日常生活関連活動(動作)
(
activities par-
allel to daily living
;
APDL
)または
手段的日常生
活活動(動作)
(
instrumental ADL
;
IADL
)があ
る
1,4)
。これは必須とまではいかない日常の活動
を指す。調理や掃除などの家事,さらには読書,
就業なども含まれる。
「
できるADL
」と「
しているADL
」という概念があ
る。条件を整えて,本人もやる気になって,テス
トをすればそのADL項目ができる,というのが
「できる」ADLであり,なにげなく行っているか
で調べるのが「しているADL」である。どちらが
よいとの問題ではなく,ADLで何を測ろうとし
ているかの違いである。「できる」が「していない」
動作は,行う必然性がないか,動作を日頃行うに
は自信のないレベルの実力かであることが多い。
なお,「しているADL」は環境に左右され,「で
きるADL」は左右されないとの主張がなされるこ
とがあるものの,「できる」環境も規格化するこ
とは困難であり,環境に左右されてしまうことは
いずれも同じである。
《園田 茂》
日常生活活動(動作)の評価
Chapter
5