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1.リハビリテーション医学の定義 

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リハビリテーション医学の定義

リハビリテーション医学は,物理医学とリハビリテーションの2つが統合された専門医学領域である。

主として物理医学的診断と治療法により運動・認知機能障害者(児)の機能改善と生活の自立を図る。歴
史的に治療医学,予防医学に続き第三(世界保健機関では健康増進を加えて,第四)の医学といわれる。

リハビリテーション医学

」は

物理医学

physical 

medicine

)と

リハビリテーション

rehabilitation

以下リハ)という一見まったく異なるようにみえ
る2つの医学の分野が統合されたものである。

すなわち,リハ医学の第一の部門である物理医

学は,古来より医療の中で用いられてきた運動療
法,電気刺激,温熱,光線療法,装具療法などを
用いて,主として運動・認知機能に障害をもつ患
者の治療や,運動電気生理学的手法により病態の
検索,診断を行うものである。

一方,第二の分野であるリハは,患者を身体

的,心理的,社会・職業的に最大のレベルまで到
達させることである 

1)

すなわち,物理医学を必要とする患者の多くは

運動機能に後遺症を残すために,心理的にも大き
な打撃をこうむる。そのために,患者は家庭や元
の職場に復帰することが困難となることも多くあ
り,リハビリ治療を通して社会復帰を図る。

端的に説明するなら,リハ医学とは種々の疾患

によって生じた神経・筋・骨格器系の運動障害な
らびに高次脳機能障害を物理医学的手段によっ
て,診断・評価ならびに治療を施し,患者に身体
的・精神的に生きがいのある社会生活を送れるよ
うに援助する専門医学分野である。

むろん,疾患の診断,治療の手段に物理医学の

みを限定しているわけではなく,リハ医学でも,一
般臨床医学で用いる血液検査,画像診断,病理学

などの診断法,また,薬物療法,神経ブロック,心
理療法などの治療法を併せて取り入れていること
は,他の臨床分野で行われる状況と同じである。

また,医学の歴史的な流れの中でリハ医学をと

らえるなら,リハ医学は

治療医学

予防医学

に続

いて必然的に発生してきたために第三の医学と称
される場合が多い。一方,世界保健機関(WHO)
では,現在の医学の体系に健康増進という項目を
加えて,リハ医学を第四の医学としている。

「リハビリテーション」という言葉も「心身に障

害を残した患者が心理・社会的に再適応し,社会
復帰(小児の場合は復学など)すること」である。
わが国に米国で体系づけられたリハ医学を広めた
先達は,あまりにもリハ医学の第二の分野である

「リハビリテーション」を強調しすぎたきらいがあ

り,本来,実学を主体とするリハ医学が,一部で
は「全人間的復権」などと,形而上的に解釈され,
医療関係者のみならず,一般の人々に理解しがた
いようにしてしまったことは遺憾に思われる 

2)

「リハビリテーション」の意味するところは,

患者が

日常生活活動

(activities of daily living;

ADL

)を自立して行い,かつ,手段的日常生活活

動(instrumental ADL;

IADL

)も快適に遂行でき,

介護量を軽減し,ひいては,

QOL

(quality of life:

生活の質)を高めることにある。そして,近年,
日常生活活動の科学的評価方法の研究と併せて,
リハ医学の重要性が再認識されている。

リハビリテーション医学総論

Chapter

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