30  レベル3 機能障害に対する介入技能

5)疼痛

・筋性のエンドフィール

4)

表1

)であり,疼痛でそれ以上他動的な可動域を増大することができない。

・無理な操作は防御性収縮を引き起こすため疼痛の軽減を優先する。また重力のかかる方向へ関節運動

を行うことも有効である(例えば患者が端座位で,療法士が下方から下腿を支えながら膝関節屈曲運
動を行うことで,患者は屈曲時の疼痛に対処しやすくなる)。

6)皮膚の癒着や伸張性低下

・外傷による創傷,手術による術創,熱傷などにより生じる。
・創傷や熱傷による瘢痕予防や二次的な不動による皮膚の伸張性低下を予防するために,皮膚への伸

張・圧迫を行う。

7)腫脹・浮腫

・外傷後の腫脹や浮腫などにより生じる。
・腫脹や浮腫が軟部組織の器質的変化を引き起こすため,浮腫のある部位を挙上して筋のポンプ作用を

利用する筋の反復収縮や末梢から中枢部に向けての圧迫などにより浮腫の改善を図る。

8)骨の衝突

・関節構成体の変形により生じる。この場合,リハビリテーションでの関節可動域の改善は困難である。

手術療法の適応となる。

B. 随意運動の量による分類と関節可動域運動の方法

1)他動的関節可動域運動(passive ROM exercise)

・患者の随意運動を伴わない関節可動域運動である。方法は,療法士の徒手を用いて筋や軟部組織を伸

張するストレッチングや機械を用いて持続伸張させる持続的他動運動(continuous passive motion;
CPM)などがある。注意点は,上位運動ニューロン損傷による異常筋緊張がみられる場合に,可能な
限り筋緊張を低下させてから運動を行うことや,疼痛がある場合に無理な他動運動を行うと防御性収
縮を引き起こす点などである。皮膚の癒着や伸張性低下,関節包の癒着や短縮,筋・腱の短縮および
筋膜の癒着などに対し,短縮した組織を伸張する運動が有効である。一方,スポーツ前のコンディシ
ョニングとしての他動的なスタティックストレッチングは,筋緊張が低下しパフォーマンスを低下さ
せることもあるので注意が必要である。

2)自動的関節可動域運動(active ROM exercise)

・患者の随意運動による関節可動域運動である。方法は,患者の筋収縮を用いて関節運動を行う。注意

点は,自動運動による関節可動域は,他動運動によるものよりも可動域が小さいため,関節可動域維
持が目的とならない点や,筋および腱断裂後における初期の関節可動域運動には禁忌となる点である。
適応は,疼痛による可動域制限や骨折術後またはギプス等の保存療法による初期の関節可動域運動,
自主練習による関節可動域維持などである。

3)自動介助的関節可動域運動(active assistive ROM exercise)

・患者の随意運動と一部介助で行う関節可動域運動である。方法は療法士の徒手を用いる方法,また患

者自身の対側肢を用いる方法,スリングを用いて四肢の重さを軽減する方法などがある。注意点は介
助量が多いと可動範囲が過大になる可能性があり,一方で介助量が少ないと可動範囲が少なくなる点
である。適応は患者の筋力低下または運動麻痺がある場合や他動的関節可動域運動で疼痛を伴う場合
などである。

3

手順のポイント

本項では主に他動的関節可動域運動の手順のポイントを示す。

1)挨拶・自己紹介を行い,患者の氏名を確認する

・患者とのラポール(信頼関係)形成のため,挨拶,自己紹介を行う。
・患者の取り違いを防止するため,患者の氏名は必ず確認する。