28  レベル3 機能障害に対する介入技能

1

関節可動域運動とは

関節可動域(range of motion;ROM)とは,関節を自動または他動運動したときに動きうる角度を指

1)

。制限因子には疼痛,皮膚の癒着や伸張性低下,関節包の癒着や短縮,筋・腱の短縮および筋膜の

短縮,筋緊張増加,関節包内運動の障害,腫脹や浮腫,骨の衝突などがある

1)

。関節可動域運動(range 

of motion exercise)とは,拘縮などによって生じた関節可動域制限に対し,その維持,増大のために行
われる運動

2)

を指す。

2

関節可動域運動の分類と方法

関節可動域運動の方法は多様であり,関節可動域制限因子や随意運動の量により関節可動域運動を分

類できる。ここでは「関節可動域制限因子による分類と関節可動域運動の方法」および「随意運動の量
による分類と関節可動域運動の方法」について記載するが,詳細は成書を参照されたい

1, 2)

A. 関節可動域制限因子による分類と関節可動域運動の方法

1)関節包内運動の障害

・構成運動や関節の遊び(joint play)の障害である。なお構成運動には転がり,滑り,軸回旋がある(

1

)。また関節の遊びには滑りと離開がある(

図2

)。関節包内運動には,凹面に対して凸の骨が可動す

る場合,骨運動とは反対方向に凸の関節面が滑ることを凸の法則と呼び,反対に凸面に対して凹の関
節面をもつ骨が可動する場合に骨運動と同一方向に滑ることを凹の法則と呼ぶ。しかし,関節面の形

関節可動域運動

1

図1

 関節包内運動(構成運動)

a:転がり:回転する関節面上に並ぶ多数の点が相対する面上の多数の点と接触する動き。
b:滑り(回旋):凹面の接点は変化せず凸面の接点だけが移動する。
c:滑り(並進):凸面の接点は変化せず凹面の接点だけが移動する。
d:軸回旋:関節面上の一つの点が相対する面上の一つの点上で回転する動き。

a

b

c

d

図2

 関節包内運動(関節の遊び)

a:滑り 関節包が弛緩する位置で,関節面に対して平行に滑らせる。
b:離開 関節包が弛緩する位置で,関節面に対して垂直に牽引する。

a

b