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病態・治療法の現状
失語症の分類
失語症(aphasia)は,「正常な言語機能をひとたび獲得した後に,何らかの原因で大
脳の言語中枢に損傷が生じ,その結果として言語表象の表出と理解に障害をきたした状
態」と定義される。構音障害が外言語の障害(発語に関する運動機能の障害)であるのに
対し,失語症は内言語の障害(大脳の言語中枢の障害)に相当すると考えられる。失語症
の原因疾患としては,脳卒中が約90%と最多を占め,次いで頭部外傷が挙げられる。脳
卒中のなかでは,中大脳動脈領域の脳梗塞と被殻出血が大半を占めている。
言語中枢は,右利きの90%以上,左利きの60〜70%で左大脳に存在するとされてお
り,ブローカ野と称される前頭葉下前頭回(ブロードマン44野と45野)とウェルニッ
ケ野と称される側頭葉上側頭回(ブロードマン41野と42野)がそれに相当すると考え
られている(
図1
)。
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A
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失語症に対する
rTMS治療
図1.
言語中枢の位置
章