CQ

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NIOSH HDリストに掲載がない分子標的薬に対しても曝露対策が 

推奨されるか

推奨

NIOSH HDリストに掲載がない分子標的薬による健康への影響がどの程度起こり

うるか,またその健康被害を曝露対策によりどれくらい防護できるかについて,明確

に示すデータはない。しかし,NIOSH HDリストにない分子標的薬により起こりう

る健康被害を極力防護するために,他のHD薬と同様の曝露対策を行うことを弱く推

奨する。

【弱い推奨,合意率 73%(11

/

15)】

◆作成の経緯

本CQに対しては,発がん性,生殖への影響,発がん・生殖への影響以外の健康被

害,HDの生物学的影響,尿中濃度,環境濃度をアウトカムとして設定した。分子標的
薬全般を対象とした検索において,二次スクリーニングに該当する文献は認められず,
エビデンス総体の強さはD(とても弱い)であった。益と害のバランスについては確実,
コストと資源については不明であった。本ガイドライン委員会によるアンケート結果に
よる医療従事者の希望については,分子標的薬に対しても曝露対策をする希望が多数で
あった。海外の状況については,NIOSHHDリスト

1)

では,HDに分類されている分子

標的薬とそうでない分子標的薬が存在している。USP<800>

2)

では,現在のNIOSH

HDリストにある項目に,NIOSHHDリストにない他の薬剤を加えたHDのリストを維
持しなければならない,また,施設のリストは少なくとも年に1回,および新しい薬剤
または剤形が使用されるときはいつでも見直されなければならない,としている。さら
に,薬剤について利用できる情報が,十分な情報に基づいた判断を下すには不十分と考
えられる場合,さらなる情報が利用できるまで危険とみなす,としている。ONS

3)

は,施設ごとにHDのリストを最低限NIOSHHDリストに加えられているものを含む
形で網羅すべき,と推奨している。

◆合意形成の経緯

当初は,NIOSHHDリストの掲載の有無に関わらず,分子標的薬全般を対象とした

システマティックレビューを行ったが,上述のように,推奨を作成する根拠となるエビ
デンスの強さはとても弱い状況であった。ただし,海外の状況を考慮し,少なくとも
NIOSHHDリストに掲載のある分子標的薬に関しては,HDとして曝露対策を行うこと
を推奨すべきという意見が本委員会で多数であり,反対意見はなかった。したがって,
NIOSHHDリストに掲載がない分子標的薬を対象とし,合意形成を再度行った。

さまざまな作用機序の分子標的薬が年々新規導入されるなか,HDとして曝露対策が

すべての薬剤に必要かどうかの議論がなされた。すべての分子標的薬における曝露対策
が,健康被害をどの程度予防するかは不明であるが,やはり海外の状況を鑑み,HDで
はないという明確なデータがない限りはHDとして扱うべきとの議論となった。

15名の委員中,推奨することに関して反対意見はなく,「強い推奨」が4名,「弱い推

奨」が11名で,「弱い推奨」で決定された。

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