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 人口統計は,各国・各地域の健康状態を明らかにするために必要なものであ
り,保健統計は疾病・傷病の状態を把握するためのものである。人口統計は人口
静態統計と人口動態統計に分類される。人口静態統計はある一時点の人口統計
であり,人口動態統計は一定期間(通常は1年)の人口の変動の統計値である。

 人は世界のどこかで誕生し,また死亡しているため,人口は刻々と変化して
いる。変化する人口を特定の瞬間でとらえた状態を,

人口静態

という。

 わが国では,1920(大正9)年の第1回調査から,西暦の末尾が0と5の年,
すなわち5年ごとの10月1日午前0時現在を期して全国規模で人口調査が行わ
れており,これを

国勢調査

(センサス;census)とよんでいる。したがって国勢

調査は

人口静態調査

である。国勢調査は統計法に基づいて行われており,調査

の主管は

総務省統計局

である。実際の調査は総務大臣が任命した国勢調査員が,

9月下旬から10月上旬までの間に各世帯を訪問して,調査票を配布・回収する
ことになっている。2015(平成27)年10月には第20回国勢調査が行われた。
 国勢調査は10年ごとの大規模調査と中間年の5年ごとの簡易調査がある。調
査が行われない年の人口は,人口の増減を補正した推計値が用いられている。
 国や地域の人口静態統計からは,人口数,人口密度,性・年齢別人口構成な
ど,集団の社会生物学的側面を知ることができる。また人口数は,出生率・死亡
率などの人口動態や受療率・罹患率などの保健統計の諸率を算出する際の分母
として用いられ,国や県,地域の健康状態を評価するために用いられる。

 国連の推計によれば,紀元元年頃の世界の人口は2億5000万人,1650年頃に
は5億5000万人程度であったとみられている。世界の人口が急増しはじめたの
は1650年頃からであり,産業革命期を経てますます増加のテンポが速まった。
ただし,第2次大戦までの世界の人口増加は年率1%を超えることはなかった。

 人口静態統計

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 世界人口の動向

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人口統計と保健統計