V

 ストーマ合併症

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2

原 因

(表1)

局所的な原因として,縫合部の循環障害・壊死(ストーマ周囲の皮膚が血流障害をきたす
ことは極めて稀であり,大部分は消化管側の循環障害に起因する壊死である),縫合部の過
度の緊張(消化管粘膜と皮膚の接合部で創面を引き離そうとする過度の張力が加わるこ
と),縫合部やストーマ周囲皮膚の感染などがある。

全身的要因がある場合,すなわち低栄養状態や悪液質,糖尿病,炎症性腸疾患(IBD)の
合併,免疫抑制剤・抗癌剤・ステロイドの投与症例では,創傷の治癒遅延が生じやすいの
で粘膜皮膚離開の原因となる。

粘膜皮膚離開は,消化管壁の血流障害あるいは還流障害,壊死,縫合部の感染など,さま
ざまな要因が複雑に絡み合って発生することが多い。

腹膜炎にて緊急手術を実施後,正中創に対して局所陰圧閉鎖処置を行った際に造設したス
トーマの粘膜皮膚離開が合併したという報告 

5)

がある。

粘膜皮膚離開をきっかけとして,その他のストーマ合併症が惹起される可能性がある。

表1

粘膜皮膚離開の原因と予防策

原 因

具体的な要因

予防策

局所的要因

循環障害・壊死

ストーマとして導出する消化管の授動が不十分
外反する消化管の過長
腹壁ストーマ孔の過小
消化管の腸間膜処理が不適切

適切な手術操作

縫合部の過度の緊張

ストーマの高さが不十分
腹壁ストーマ孔の過大

適切な手術操作

感染

不適切な縫合による腸内容の皮下組織への汚染適切な手術操作

全身的要因

創傷治癒機転の
遅延因子の存在

低栄養状態,悪液質

適切な手術操作

糖尿病,炎症性腸疾患(IBD)の合併

病勢コントロール

免疫抑制剤・抗癌剤・ステロイドの投与

病勢コントロール

3

評 価

粘膜皮膚離開の発生部位,大きさ(拡がり),深さ,感染の有無,周囲の皮膚障害の有無,
病変部からの排出物の有無とその性状などを適確に診療録に記載して,ストーマケアに関
与するスタッフ間で情報を共有する。可能であれば,画像(フリーハンドのスケッチでも
可)としても残すように心がける(

図3

)。

ストーマ造設に伴う早期の外科的合併症に関しては,複数のものが併存して発生すること
も多いため,各々の施設で所定の書式を作成し,ストーマに関する観察項目を統一してお
くと,粘膜皮膚離開以外のことについても配慮でき,効率的なケアにつながる(

図4

)。

粘膜皮膚離開の重症度は,Grade 1:ストーマケア方法の大きな変更を要さない,Grade 
2:ストーマケア方法の変更と外来でも施行可能な処置で対応可能,Grade 3:入院あるい