治療関連皮膚障害

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前の照射野の皮膚炎や粘膜炎などが呼び戻されることがあり,これをリコール現象と言う。

ストーマ造設者の場合には化学療法の場合と同様,本来のストーマ周囲皮膚障害のリスク
の上に放射線性皮膚障害のリスクが加わるので,発赤,表皮剥離,びらん,潰瘍などのス
トーマ周囲皮膚障害が発生しやすくなったり,重症化したりする。

ストーマが放射線照射の範囲とならない場合には,皮膚障害のリスクは生じない。当然で
はあるが,これが全身療法である化学療法との大きな相違である。

発生機序と症状

1)発生機序

細胞は放射線が照射されるとDNAの損傷を起こす。放射線感受性は対象となる細胞の種
類と状態で異なり,分裂頻度の高いもの,細胞分裂の数の多いもの,また形態および機能
が未分化なものほど感受性が高い。

この法則を用いて細胞分裂が盛んで未分化な細胞であるがんなどの腫瘍に放射線を照射し
死滅させる治療法が,がん放射線療法である。

放射線は標的である腫瘍のみならず,腫瘍に達するために通過してきた,あるいは標的腫
瘍の付近にある皮膚,骨,臓器,器官などのDNAにも影響を与える。こうして起こるの
が各種の放射線障害である。

皮膚では細胞新生を担う基底層が大きく影響を受けて,ターンオーバーのバランスを失っ
て皮膚の菲薄とドライスキンの状態となる。このような皮膚は損傷を受けやすく,またド
ライスキンの症状である搔痒感を緩和させようとして,患者自身が擦ったりして損傷させ
やすい。また一方で,皮脂腺,汗腺などの機能低下,毛胞の消失,真皮の毛細血管の炎症
や拡張,コラーゲン繊維の断裂なども起こる。これらが複合して放射線性皮膚障害となっ
て現れる。

ストーマの周囲皮膚の場合には,菲薄化し皮膚保護性を低下させた皮膚の上で,装具の剥
離,皮膚の洗浄による刺激,排泄物の加重,排泄物の接触,粘着剤の接触などが起こるの
で,ストーマ周囲皮膚障害のリスクは相当に高まり,また既存の皮膚障害は重症化する。

こうして起こるのが放射線性ストーマ周囲皮膚障害である。もちろん放射線性ストーマ周
囲皮膚障害は,放射線の影響がストーマあるいはストーマ周囲に及んだ部位にのみ発生す
ることは前述のとおりである。

2)症 状

a)電子線 electron-beamradiationtherapy

がんの治療として用いられるのは通常,電子線である。電子線の特徴は,身体の深部まで
達せずビームが広がる傾向にあることであり,影響を受ける皮膚には前述の機序によって
発赤,乾燥,落屑,びらん,表皮剥離などが起こりやすく,場合によっては壊死や潰瘍が
おこることがある。

最近では,高性能の放射線治療装置であるリニアックを用いて,あらゆる方向から照射し
て複雑な形状の照射野に対応したり,放射線量を分割して一ヵ所に係るリスクを軽減した
り,強度変調放射線治療が行われるようになり,照射が腫瘍に集中するようになったため