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9第9章 ストーマの位置決めe)緊急手術時の位置決め 緊急手術の場合も可能な方法,手段でストーマの位置を検討してから手術を行う。緊急手術は時間的制約や人的問題などからストーマの位置決めが後回しになったり,患者の身体症状が強い場合やストーマに対する理解が得られない場合,省略してしまったりすることがある。しかし,術前準備が十分でない緊急手術は合併症を発生しやすい。特に汚染手術などで開腹創が離開し,二次縫合創として厳密な創管理が必要になった場合,ストーマの位置が大きく影響する。またストーマの早期合併症も起こりやすく,ストーマ管理が困難になりやすい。緊急手術で突然造設されたストー引き出す両側尿管皮膚瘻と,左右尿管を合流させて片側に造設する一側尿管皮膚瘻がある。尿管の屈曲や過度な緊張による血流障害は,排尿経路としての機能が維持できず,腎機能にも影響を及ぼす可能性がある。そのため尿管への腫瘍浸潤や使用できる尿管の長さなどの情報に基づき,過度な緊張や屈曲がない位置にマーキングする必要がある。 また尿管狭窄を予防するため,腹直筋内ではなく,腹直筋外で,前腋窩線より内側の位置でマーキングを行う。手術中の所見により使用できる尿管の長さが変化する可能性があるので,複数個マーキングして対応できるようにする。 骨盤内臓全摘術では,結腸ストーマ,尿路ストーマが同時に造設される。一般的に結腸ストーマを左下腹部,尿路ストーマを右腹部に造設するが,腹部全体を見ながらそれぞれのストーマの最良の位置を検討する。しかし2つのストーマが水平に並ぶとストーマ装具が重なる可能性が高く,ストーマベルトなどの着用も難しくなるため,高さをずらし,両ストーマ間に9cm程度距離を確保する。さらに尿路ストーマの方が解剖学的制約を受けるため優先的に位置を選択し,可能な限り結腸ストーマより頭側にマーキングを行う。f)肥満者のストーマ 肥満者は脂肪組織が多く腹壁に厚みがあること,腸管周囲に付着する脂肪も多いことから,ストーマ造設のための腸管を十分に挙上することは容易ではない。そのため理想的なストーマの形状に造設することが難しい場合がある。また,脂肪組織の術後の萎縮や易感染性などからストーマの合併症も起こしやすい。ストーマの形状に関わらマが管理困難になった場合,その後のセルフケア習得やストーマの受容を妨げる要因になる可能性がある。そのため短時間で適切なマーキングをすることが求められる。 手術前の身体症状が強い場合は,麻酔導入後に行うことが望ましい。腹膜炎症状などで仰臥位が保持できない場合や疼痛で緊張が解けない場合,腹部を触診することが難しい場合などは麻酔導入後の安定し,緊張が解けた状態で行った方が効果的である。この場合,まずはストーマ位置決めの原則に基づき基本線を引く。その後両下肢を持ち上げ,両側の膝関節を深く屈曲させて腹部に発生する皺の位置を把握する。術式が明確でない場合が多いため,左右上下腹部に,ストーマ造設可能な位置を複数個マーキングする。 通常はマーキング位置をポイントで示すが,緊急時はストーマ造設許容範囲を示すエリアマーキングを行う場合もある。この場合,骨突出部や避けるべき瘢痕,皺から7cm離した部位に行う。d)骨盤内臓全摘術におけるストーマ(図9—3—17)3.位置決めの実際143図9—3—17 骨盤内臓全摘術によるダブルストーマ

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