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  Part 2

Ⅰ.方法

1

.作成方法について

診療ガイドラインの定義ならびに全体の構成は,旧米国アカデミー医学研究所(Institute of 

Medicine of the National Academies:IOM)の方針に従った(表2-1

2, 3)

。詳細な手順としてはコク

ランハンドブックならびに,Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evalu-
ation(GRADE)ワーキンググループによって開発されたGRADEアプローチに従って作成した

4, 5)

GRADEアプローチでは,エビデンスの効果推定値の確実性(表2-2)を評価したうえで,望ましい
効果と望ましくない効果のバランスについて判断し,その後,推奨の強さを決断する(表2-3)。

本診療ガイドライン作成上の留意点は,①1つのクリニカルクエスチョン(clinical question : 

CQ)に対して1つのシステマティックレビュー(systematic review : SR)を行い,1つの推奨文を作
成するのでなく,複数のキークエスチョン(key question : KQ)を作成してより患者が知りたい包
括的な疑問に対応した。②SRであればエビデンスレベルが高いという従来の解釈でなく,質の高
いSRであっても,そのなかのエビデンスの確実性が高い場合もあれば低い場合もあることを明確
にした。③推奨の強さと方向に関する確実性の程度の判断には,確実性は「連続体」であるという
認識が必要であり,例えば,「行うことを弱く推奨する」場合,さまざまな要因や患者との相談の
結果「行わない」ことを選択する場合も少なくないことを明記した(図2-1)。

日本語の用語は,Minds(日本医療機能評価機構EBM医療情報部)の『Minds診療ガイドライン

作成の手引き2014』ならびに『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』も参考にした

6, 7)

ただし,作成方法は,GRADEアプローチのみに従って作成した。そのため,本診療ガイドライン

表2-1 旧米国アカデミー医学研究所による診療ガイドラインの定義

Clinical Practice Guidelines are statements that include recommendations intended to optimize patient 
care that are informed by a systematic review of evidence and an assessment of the benefits and 
harms of alternative care options. (診療ガイドラインはエビデンスのシステマティックレビューと複数
の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書である。)

参考文献2, 3)より引用

表2-2 エビデンスの効果推定が正しいという確実性の程度(エビデンスの質)のカテゴリー

エビデンスの確実性

定義

真の効果が効果推定値に近いという確信がある。

効果推定値に対し,中等度の確信がある。真の効果が効果推定値に近いと考えら
れるが,大幅に異なる可能性もある。

効果推定値に対する確信には限界がある。真の効果は効果推定値とは大きく異な
るかもしれない。

非常に低

効果推定値に対しほとんど確信がもてない。真の効果は,効果推定値とは大きく
異なるものと考えられる。

参考文献3, 4)より引用