第2部 病理学的事項
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亜型:肉腫を伴う精母細胞性腫瘍(Spermatocytictumorwithsarcoma)
精母細胞性腫瘍にはまれに肉腫(未分化肉腫,横紋筋肉腫など)を伴うことがある。肉
腫成分が転移をすることがある。
b)奇形腫,思春期前型(Teratoma,prepubertal—type)
思春期前の精巣に好発する腫瘍で,遠隔転移は生じない。内・中・外胚葉成分から構成
される(
図31
)。GCNIS成分はなく,i(12p)の存在を認めない。極めてまれに成人例が
存在するが,診断時には注意が必要である。
①皮様囊腫(Dermoid cyst)
肉眼的に囊胞性病変で,内部にケラチン様物質を認める。囊胞成分は,付属器成分を
伴った成熟した皮膚組織から構成される。
②類表皮囊腫(Epidermoid cyst)
肉眼的には皮様囊腫と同様の所見を示す。囊胞壁は成熟した表皮(扁平上皮)成分のみ
から構成される(
図32
)。
③ 高分化神経内分泌腫瘍(単胚葉性奇形腫)(Well—differentiated neuroendocrine
tumor[monodermalteratoma])
小児および成人のいずれにも発生する。単独で発症する症例と奇形腫,皮様囊腫もしく
は類表皮囊腫と合併して発生する症例がある。小型類円形核を有する腫瘍細胞が胞巣状も
しくは腺房状に増殖する,中腸型の同名腫瘍と類似した組織像を示す(
図33
)。時に回盲
部付近の同名腫瘍の転移との鑑別が問題となる。おおむね良性の経過を示すが,壊死や異
型分裂像を示す症例では遠隔転移をすることがある。
注)
『精巣腫瘍取扱い規約 第3版』までは,高分化神経内分泌腫瘍はカルチノイドとして分類
されていた。
c) 奇形腫・卵黄囊腫瘍混合型,思春期前型(Mixed teratoma and yolk sac tumor,
prepubertal—type)
思春期前の精巣に発生する腫瘍。奇形腫,思春期前型と卵黄囊腫瘍,思春期前型の合併
である(
図34
)。
精母細胞性腫瘍
セミノーマ
頻度(%)2~12
88~98
年齢(歳)50~
20~50
発生部位
精巣
精巣,卵巣,尾仙骨部,後腹膜,縦隔,松果
体部
肉眼像
淡褐色,浮腫状,出血,壊死少ない灰白色,しばしば壊死あり
組織像
核
大・中・小の3種
細線維(糸玉)状クロマチン
均一
クロマチン粗い
胞体
やや好酸性
グリコーゲンなし
淡明
グリコーゲン多い
間質
乏しい
リンパ球浸潤,肉芽腫反応を欠く
不定
リンパ球浸潤があり,ときに肉芽腫反応を
認める