中のAFP値とβ—hCG値および腫瘍径が後腹膜リンパ節郭清の病理学的病期を予
測できるかを検討したところ,術前β—hCG値と腫瘍径は予測できなかったが,術
前AFP値は後腹膜リンパ節での病理学的病期を予測できたと報告した

5)

。AFP

の血中半減期は5—7日であり,個々の症例のAFP値の半減期を計算することで,
精巣腫瘍の残存の有無を判定する際の参考となる。時に,病理学的にpure semi-
nomaと診断されてもAFPが上昇していることがある。そのような場合は,検出
できていない非セミノーマ成分が存在すると考えられる。
 また,治療後にAFPが軽度上昇している場合があり,残存腫瘍の有無の判断
に迷う場合がある。その場合は,AFP分画のうちAFP—L3を測定することやコ
ンカナバリンA結合AFP比を測定することで,肝疾患等から鑑別することが可
能と報告されている

6,7)

 hCGはα鎖とβ鎖からなる。通常は非セミノーマの40—60%で上昇するが,
AFPと同様にセミノーマと診断された場合でも上昇することがある。hCGの測
定にはいろいろなキットが存在するので,その評価には注意が必要である

8)

。す

なわち,わが国ではhCGのβ鎖の測定にはfree β—hCGの他にtotal β—hCGや
total HCGがあり,またfree β—hCGを測定しないintact hCGがある。free β—hCG
のみを測定するキットはIGCC分類に使用できないため,測定キットの単位が
mIU/mLのキットを用いることが必要である。ただし,治療経過を観察していく
上では,total β—hCGもfree β—hCGもそれぞれ腫瘍マーカーとして病勢評価に有
用であるという報告もあり

9,10)

,同一キットを継続的に使用して経過観察するこ

とが重要である。(コラム2,23ページ参照)
 その他の腫瘍マーカーとしては,胎盤性アルカリフォスファターゼ(PLAP)

11)

がpure seminomaの経過観察に有用な場合があり,必要に応じて測定すべきと
EAUのガイドラインには記されている

12)

。また,白人に多い精巣CISのマーカー

としてstem cell factor(c—kit ligand)やOCT3/4が有用という報告

13)

やGlypican 

3

14)

,循環血中のmitochodrial DNA

15)

が精巣腫瘍のマーカーとして有用という報

告もあるが,いずれもその有効性は確立していない。

 1) J Clin Oncol. International Germ Cell Consensus Classification:a prognostic factor—based 

staging system for metastatic germ cell cancers. International Germ Cell Cancer Collab-
orative Group. J Clin Oncol. 1997;15:594—603.

(Ⅴ)

 2) Wanderås EH, Tretli S, Fosså SD. Trends in incidence of testicular cancer in Norway 

1955—1992. Eur J Cancer. 1995;31A:2044—8.

(Ⅲ)

 3) Germa—Lluch JR, Garcia del Muro X, Maroto P, et al. Spanish Germ—Cell Cancer Group

(GG). Clinical pattern and therapeutic results achieved in 1490 patients with germ—cell 

tumours of the testis:the experience of the Spanish Germ—Cell Cancer Group(GG). Eur 
Urol. 2002;42:553—62.

(Ⅲ)

文 献

21