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低い。無増悪生存率に関しては,3件の同種造血幹細胞移植に関する症例集積研究で,Duarteらは3年無増悪生存率34%177),Lechowiczらは5年無増悪生存率17%179),Hosingらは4年無増悪生存率25.5%288)と報告している。これらの無増悪生存率は同種造血幹細胞移植単独の結果である可能性が高い。最近の再発難治性菌状息肉症・セザリー症候群に対する非移植治療の成績に関しては,2018年にKimらによって報告されたMAVORIC試験においては126),モガムリズマブ,ボリノスタットの2年無増悪生存率はそれぞれ20%以下,10%以下である。また,2017年にPrinceらによって報告されたALCANZA試験においては132),再発難治性のCD30陽性の菌状息肉症・セザリー症候群,未分化大細胞型リンパ腫を対象に,ブレンツキシマブ ベドチンの2年半無増悪生存率は20%以下であり,メトトレキサートあるいはベキサロテン治療群の1年半無増悪生存率は20%以下である。このように,対象患者,背景などは一致しておらず,直接比較はできないが,同種造血幹細胞移植ほどの長期の無増悪生存を期待できる治療は乏しく,無増悪生存率という点では,同種造血幹細胞移植は非移植治療よりも推奨される可能性がある。治療関連死亡に関しては,3件の同種造血幹細胞移植に関する症例集積研究で,Duarteらは2年再発以外の死亡率21.7%(1年20%)177),Lechowiczらは5年再発以外の死亡率22%(1年19%,3年22%)179),Hosingらは2年再発以外の生存率16.7%(1年10.4%)288)と報告している。MAVORIC試験における治療関連死亡率は126),フォローアップ期間中(中央値17カ月)に,モガムリズマブで1%,ボリノスタットで2%であった。また,ALCANZA試験においては132),フォローアップ期間中(中央値22.9カ月)で,ブレンツキシマブ ベドチンの治療関連死亡率は1%,メトトレキサートあるいはベキサロテン治療群では,0%であった。このように,対象患者,背景などは一致しておらず,同種造血幹細胞移植のデータは再発以外の死亡率であり,治療との関連性の有無の判断が不明であり,直接比較はできないが,治療関連死亡率という点では,同種造血幹細胞移植は非移植治療よりも推奨されない可能性がある。再発率に関しては,非移植治療では完全寛解に至る割合がかなり低く,詳細な解析に乏しく,比較はできない。GVHDに関しては,非移植治療では発生しないため,その点では同種造血幹細胞移植は非移植治療と比較して,推奨されない。入院期間については,記載のある文献はなかった。症例数40を超える菌状息肉症・セザリー症候群における同種造血幹細胞移植の症例集積研究が3件あったが,非移植治療と比較を行った文献はなかった。3件のうち,2件で不十分な交絡の調整を行っておらず,評価のタイミングも文献によって異なり,バイアスリスクは高い。いずれのアウトカムにおいても,同種造血幹細胞移植と非移植治療の直接的な比較はできなかった。比較対象群として,全生存率に関しては,1件の症例数1,275の病期ⅡB以上の菌状息肉症・セザリー症候群の症例集積研究を採用し,無増悪期間,治療関連死亡に関しては,2件のRCTを採用したが,評価項目も文献によって,まちまちであり,エビデンスの確実性はとても弱いと判断した。2)利益と害のバランスはどうか?介入群と対照群を直接比較した文献はなく評価ができない。しかし,介入群での3〜5年の長期的な無増悪生存率が14.3〜34%と報告されている一方で,非移植治療(対照群)に関する最近のCQ 4 333▪パネル会議1)アウトカム全般に関するエビデンスの質(確実性)はどうか?

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