1 陥入爪えるのでは」と提案してくれました。レントゲン・フィルムは患者さんの記録ですから,3年間の保存が義務づけられていますが,その後は廃棄されます。廃棄されるレントゲン・フィルムを使ってみると,上手く人工爪ができました。 人工爪による陥入爪の治療法を皮膚科医の会で講演したところ,聴衆の医師の一人が,それは歯科で使っているアクリル樹脂と同じものでしょうと教えてくれました。こうして多くの同僚や医師の助けで,アクリル人工爪療法は完成しました。感謝! 感謝! です。 歯科で使われているアクリル樹脂を使って,短く切られた爪甲の上にアクリル人工爪を装着して爪甲を長くする方法は,理論的にも良い方法と考えています。爪甲側縁で爪甲下に小さく切り,折り曲げたレントゲン・フィルムを挿入する時に,痛みがありますので,麻酔が必要となります。そのために,医師しか治療を行えません。類似の方法にガター法というのもあります。爪甲側縁にプラスチック・チューブを挿入し,アクリル樹脂で固定します。これも良い方法です。 アクリル人工爪療法について簡単に説明します。 使用する材料は,歯科で使用されている常温重合レジンであるアクリル樹脂粉末と,アクリル樹脂液,麻酔薬の1%リドカイン注射液,人工爪の土台を作るのに必要な使用済みのレントゲン・フィルム,レントゲン・フィルムを固定するための紙絆創膏です。アクリル樹脂混合物を,爪甲からレントゲン・フィルム上に塗布するための小筆が必要です。これは水彩画用の小筆を使っています。また,小筆に付いたアクリル樹脂混合物を除去するのにアセトンが必要です。 図27Aの例は,爪甲の両側が短く切られて,右側では肉芽も認められます。第1趾の基部で1%リドカインによる伝達麻酔を行った後で,左側の爪甲側縁に沿って小さく切ったレントゲン・フィルムに,折り目をつけて挿入したところが図27Bになります。麻酔をしていないと,この時に痛みがあります。爪甲の側縁が短く切られているのが判ります。次に爪甲の表面からレントゲン・フィルムの上にかけて,アクリル樹脂粉末とアクリル樹脂液を混合したものを小筆を使って塗布します。数分すると樹脂が硬化し,固まります。図27Cは樹脂が硬くなった後で,レントゲン・フィルムを除去した状態を示しています。この後,反対側にも同じ操作をすると,アクリル人工爪が完成します。術後当日から入浴も可能49
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