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6章 炎症性疾患の組織反応パターン(各論)
1.海綿状パターン
海綿状パターン(spongiotic pattern)では,
表皮細胞間浮腫すなわち海綿状態(spongiosis)
が認められる。このパターンの存在が確認され
たときはほかのパターンもみられることが多
く,必然的にハイブリッド診断に利用される頻
度も高い。
「湿疹」は症状名であり,湿疹という症状を呈
する疾患をまとめたものが「湿疹・皮膚炎群」
である。この湿疹・皮膚炎群の臨床病理学的相
関を示すと
図1
のようになる。
湿疹・皮膚炎群の臨床像は,いわゆる「湿疹
三角形」といわれているアルゴリズムがとらえ
やすい。これは左側が急性,右側にいくほど慢
性の状態を表している(
図1
)。青色の楕円が急
性の状態,赤色の楕円が慢性の状態を示す。
海綿状パターンに含まれる疾患について重要
なものを
表1
に列挙する。番号順に説明する
が,湿疹・皮膚炎群に含まれるものとして,
表
1
の① アレルギー性接触皮膚炎,② 光アレル
ギー性接触皮膚炎,③ 刺激性接触皮膚炎,④ 異
汗性湿疹,⑤ 自家感作性皮膚炎,⑥ アトピー性
皮膚炎,⑦ 貨幣状湿疹,⑧ 脂漏性皮膚炎,⑨
慢性単純性苔癬(Vidal苔癬),⑩ 皮脂欠乏性湿
疹が挙げられる(
図3
緑色の枠内)〔以下,本
文のマル数字 ①~㉓ はすべて
図1~3
と一致〕。
この中で ①~⑤ が急性状態を,⑥ のアトピー
性皮膚炎はすべての状態を含む広いスペクトラ
ムの疾患である。⑦ 貨幣状湿疹は急性~慢性
を,⑧ 脂漏性皮膚炎は亜急性~慢性を主座とし
湿疹三角形と急性・慢性状態
1
海綿状パターンに含まれる疾患
2
6章 炎症性疾患の組織反応パターン(各論)
図1
湿疹・皮膚炎群の湿疹三角形による臨床像のとらえかた
急性湿疹(
) 慢性湿疹(
)
膿 疱
湿 潤
小水疱
丘 疹
紅 斑
落 屑
苔癬化
治 癒
結 痂