46 第1部

CQ 3

有棘細胞癌の原発巣は病巣辺縁から何mm 離して切除することが勧
められるか

推奨度

B

6

 

mm以上離して切除することが勧められる。低リスク群(

解説

および

付2

参照)であること

が確実な症例は4

 

mm以上離して切除することが勧められる。

▪解説

 有棘細胞癌(SCC)の局所再発率という観点から切除範囲の評価を行っているシステマティッ
ク・レビューおよびランダム化比較試験(RCT)は存在しない。各国のガイドラインでは,Brod-
landらの論文

1)

が切除範囲を設定する根拠として挙げられることが多い。この研究はMohs手術

に基づく症例集積研究であり,111症例141個の皮膚原発性の浸潤性SCCを対象として,術後
15カ月間観察している。著者らは,腫瘍径,組織学的分化度,部位,浸潤度などを考慮して,切
除範囲と局所制御率との関連を検討した。その結果,切除マージンは最低限4

 

mm必要であり,

さらに径2

 

cm以上のもの,組織学的分化度がBroders悪性度分類のgrade 2以上のもの,ハイ

リスク領域(頭部・耳・眼瞼・鼻・口唇)のもの,皮下へ浸潤しているものについては,6

 

mmの

切除範囲が必要であると結論づけている。
 英国のガイドライン

2)

では,径2

 

cm未満で低リスク,境界明瞭なSCCは4

 

mmの切除範囲に

より95%の症例で完全に切除できるとしている。より大きな腫瘍,組織学的にgrade 2 以上,皮
下まで進展したもの,リスクの高い部位(頭皮・耳・眼瞼・鼻・口唇)では6

 

mm以上の切除範

囲を推奨している。
 オーストラリアのガイドライン

3)

では,径2

 

cm未満の高分化のSCCであれば,切除範囲4

 

mmで95%の症例で適切に切除できるとしている。径2

 

cm超のSCCには10

 

mmまでの切除範

囲が必要となり,より大きなものはさらに広い切除範囲を要するとしている。
 米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン

4)

では,SCC を

低リスク群と高リスク群に分け(

付2

),切除範囲は低リスク群では4〜6

 

mmとし,高リスク群

のうち体幹・四肢(L 領域)では10

 

mm,それ以外のものはMohs 手術かCCPDMA(com-

plete circumferential peripheral and deep margin assessment with frozen or permanent 
section)を推奨し,特に切除範囲を定めていない。なお,SCC周囲の紅斑は腫瘍に含めて切除範
囲をとるように記載されている。
 以上より,切除範囲は,低リスク群では4

 

mm,高リスク群では6

 

mm以上10

 

mmまでの幅の

中で判断すればよいと考えられる。低リスク群と高リスク群との割合については,高リスク群が全
体の79%を占めていたとの英国からの報告がある

5)

。リスク因子が1つでもあれば高リスク群に

入ることや,本ガイドラインにおけるリスク因子は英国より多く設定されているため,高リスク群
と評価される割合は更に多くなる可能性がある。このことから,切除範囲は最低限6

 

mmを原則

とし,低リスクであることが確実な症例のみ切除範囲を最低限4

 

mmとしてもよい,とする方が

現実的であり,それを反映した推奨文とした。もちろん切除標本における詳細な断端の評価は必須
であり,治癒率を高めるためにはより大きな切除範囲が必要となる場合があることも留意すべきで