1 進行度・病期の診断頭頸部領域には複数の原発部位があり,各原発部位は必ずしも一定の構造を有しているわけではない。そのため原発巣の評価に際しては臨床所見をもとに,腫瘍の進行度と同時に各部位の解剖学的特性を十分理解したうえで検査方法を選択する。リンパ節転移や遠隔転移は頭頸部癌の重要な予後因子であり,その適切な評価が治療法の選択に必要である。1)原発巣の評価は?頭頸部癌の原発巣診断は問診および視診・触診を行い,各原発巣に応じて鼻腔・咽喉頭内視鏡検査,上部消化管内視鏡検査,パノラマX線検査,下咽頭食道造影検査,超音波検査(US),CT検査,MRI検査により総合的に判断する。最終的な診断は病理組織学的検査ないしは細胞学的検査による。深部浸潤,隣接臓器への浸潤の評価には造影CT検査,MRI検査が有用である。一般にCT検査は骨皮質の描出においてMRI検査より優れ,MRI検査は骨髄,軟部組織,隣接臓器浸潤の評価に優れる 1-3)。甲状腺癌の診断にはUSおよびUSガイド下穿刺吸引細胞診が第一選択であり 4,5),必要に応じてCT検査,MRI検査を行う。喉頭癌・中下咽頭癌の診断には内視鏡検査に造影CT検査,MRI検査を併用することで診断精度が向上する。声門癌T1病変では内視鏡検査のみでも診断可能であるが,進行癌については過小評価となりやすい 6-11)。中下咽頭の表在性腫瘍病変の診断に拡大内視鏡,狭帯域光内視鏡の有用性が報告されている 12,13)。2)リンパ節転移・遠隔転移の評価は?頭頸部癌の転移はリンパ節転移が多く,遠隔転移は比較的稀で頭頸部悪性腫瘍全国登録の2016年度初診症例の報告書 14)では2.8%である。遠隔転移の中では肺転移が最も多く,骨転移,肝転移がそれに続く。リンパ節転移,遠隔転移の診断は問診および視診・触診を行い,US,造影CT検査,MRI検査,骨シンチ検査,PET-CT検査などにより,総合的に判断する 15-24)。肺転移については胸部CT検査かPET-CT検査で評価する。進行癌では肺転移に加え,肝転移と骨転移の有無の検索も考慮する。肝転移の検索にはUS,造影CT検査,MRI検査,PET-CT検査が有用であり,骨転移にはCT検査やMRI検査,PET-CT検査が有用である。 2 重複癌の検索頭頸部悪性腫瘍全国登録の2016年5年後予後調査 25)の結果では,頭頸部癌(大唾液腺癌を除く)の23.9%(1,441/6,014)に同時性重複癌の発生を認め,第1癌の原発部位は下咽頭,口腔,中咽頭の順であり,重複癌の発生部位は食道が最も多く,次いで頭頸部,胃,大腸,肺の順であった。また異時性重複がんの発生が21.5%(1,289/5,990)に認められ,第1癌の原発部位は下咽頭,喉頭,口腔,中咽頭の順であり,重複癌の発生部位は頭頸部が最も多く,次いで食道,肺,胃,大腸の順であった。10
元のページ ../index.html#6