1 作成の目的本ガイドラインは,頭頸部癌に関する最新のエビデンスを含め検討し,現時点での標準的な検査・治療の考え方を示したものである。頭頸部はヒトが人として生きるために欠かすことができない多くの機能を司っており,頭頸部癌の治療にあたっては「根治性」と「生活の質の維持」の両立が求められる。本ガイドラインは記載した内容と異なる診断法や治療法を施行することを規制するものではないが,現在,本邦で実施可能な多様な治療法のなかから,個々の症例に最も適した治療法を選択するための参考となることにより,患者に最善のアウトカムをもたらすことを目指している。主な目的は以下のとおりである。1 頭頸部癌の適正な診断と治療を示すこと2 頭頸部癌診療における施設間差を少なくすること3 治療の安全性と治療成績の向上を図ること4 過剰な治療を避けて,人的・経済的負担を軽減すること5 ガイドラインを広く一般にも公開して,医療者と患者の相互理解にも役立てること 2 利用の対象者頭頸部癌の診療に携わる医師および歯科医師などの医療従事者を対象とする。さらに,患者やその家族を含めた方が頭頸部癌に対する理解を深めるために利用することも想定している。 3 取り扱う疾患本ガイドラインの対象となるのは頭頸部に発生した悪性腫瘍を有する患者である。前々回の改訂時点では,口腔,上顎洞,咽頭,喉頭の扁平上皮癌,甲状腺癌,唾液腺癌,原発不明癌-頸部リンパ節転移を対象としていたが,2022年版で嗅神経芽細胞腫を新たに加えた。今回の改訂では,さらに聴器癌,悪性黒色腫,横紋筋肉腫を採り上げ,対象疾患の幅を一層拡充した。 4 本ガイドラインの使用法本ガイドラインは系統的文献検索で得られたエビデンスを尊重するとともに,現在の日本の医療保険制度や診療現場の実情にも配慮した頭頸部癌診療の専門家のコンセンサスに基づいて作成されており,診療現場において頭頸部癌の診療を実践する際のツールとして利用することができる。本ガイドラインは頭頸部癌に対する治療方針を立てるための一つの目安を示すものであり,記載されている以外の治療方針や治療法を規制したり,医師の裁量権を制限したりするものではない。患者,施設・地域に特有の条件・事情により診療方針が変わり得ることもできるだけ勘案した推奨をあげており,その点を考慮して参照していただきたい。2
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