Ⅳ-4. 上咽頭癌CQ4-1上咽頭癌の放射線治療において,強度変調放射線治療は推奨されるか?推 奨上咽頭癌の放射線治療において,強度変調放射線治療を行うよう推奨する。推奨の強さ:強く推奨する エビデンスの確実性:B 合意率:100%解 説上咽頭癌の放射線治療において,従来二次元ないしは三次元原体照射(2/3-dimensional radiotherapy:2D/3D-RT)が行われていたが,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)が広まり,本邦でも多くの施設で実施されている。IMRTは2D/3D-RTと比較して,腫瘍への線量集中性と,正常臓器への線量低減において優れる。この臨床上の意義を検証するために,IMRTと2D-RTの第Ⅲ相ランダム化比較試験が行われた 1)。Ⅰ〜ⅣB期(UICC第6版)の上咽頭患者616名を対象とし,5年全生存率(overall survival rate:OS)においてIMRTが2D-RTよりも有意に良好であった(79.6% vs. 67.1%,p=0.001)。合併症に関して,口内乾燥症 2),および唾液分泌量 3)をプライマリーエンドポイントとしたランダム化比較試験がそれぞれ報告されている。前者においてはT1-2b,N0-1,M0(UICC第5版)の早期上咽頭癌患者60例を対象とし,照射後1年における医師が評価した中等度以上の口内乾燥症の割合に関して,IMRTが2D-RTよりも有意に良好であった(39.3% vs. 82.1%,p=0.001)。15年の長期経過観察後においても結果は同様であった(20% vs. 90%,p=0.001) 4)。後者においてはT2,N0-1,M0(UICC第5版)の早期上咽頭癌患者51名を対象とし,照射後1年における有刺激全唾液分泌量が治療前の25%以上回復した患者の割合に関して,IMRTが2D-RTよりも有意に良好であった(50.0% vs. 4.8%,p<0.05)。IMRTと2D/3D-RTを比較したメタアナリシスが複数報告されている 5-7)。いずれにおいてもIMRTは2D/3D-RTよりもOSは有意に良好であった[Duら 5):5年OS オッズ比(odds ratio:OR)=1.70(95%信頼区間:confidence interval:CI 1.36-2.12),Luoら 6):OS OR=0.51(95%CI 0.41-0.65),p<0.00001,Zhangら 7):5年OS OR=1.51(95%CI 1.23-1.87),p=0.0001]。無増悪生存率(progression-free survival rate:PFS)や無病生存率(disease-free survival rate:DFS)に関しても同様にIMRTで有意に良好であった[Duら:5年PFS OR=1.40(95%CI 1.26-1.56),Luoら:DFS OR=0.77(95%CI 0.65-0.91),p=0.002]。合併症に関して,晩期の口内乾燥症[Duら:OR=0.21(95%CI 0.09-0.51),Zhangら:OR=0.18(95%CI 0.07-0.46),p=0.0004],開口障害[Duら:OR=0.16(95%CI 0.04-0.60),Zhangら:OR=0.18(95%CI 0.04-0.83),p=0.03],側頭葉神経障害(脳壊死など)(Duら:OR=0.40(95%CI 0.24-0.67);Zhangら:OR=0.44(95%CI 0.28-0.69),p=0.0003]においてIMRTで有意に良好であった。以上より,生存,治癒,合併症の観点から,IMRTを行うように強く勧められる。Ⅳ-4. 上咽頭癌 171Ⅳ
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