5-1. メニエール病の治療 1) メニエール病のめまい発作急性期の治療メニエール病の診断がつき,めまい発作を反復する症例では,まずその場で安静とする。めまい発作が高度の場合は,入院も考慮し,7%重曹水の静注(20〜40mL)を行う。エビデンスは確立されていないが,経験的にメニエール病を含む急性めまいに効果があると考えられており,広く治療に用いられている。なお,重曹水は急速な静注を行うと血管痛が発現することがあるので注意を要する。同時に,必要に応じて制吐薬や抗不安薬を投与する。入院中の治療と入院期間は,症状の経過と眼振所見,体平衡障害などの他覚所見により決定する。また,めまい症状が比較的軽度の場合は,重曹水点滴後に抗めまい薬などの処方で帰宅させることも可能である。⁃入院治療1.生理食塩水/維持輸液500〜1,000mL 点滴静注2.7%重曹水20mLまたは40mL静注3.制吐薬:メトクロプラミド10mg筋注/静注またはドンペリドン60mg座薬4.抗不安薬:ジアゼパム5mg筋注/静注⁃在宅治療1.抗めまい薬:以下のいずれかを単独または併用ジフェニドール3錠75mg分3ベタヒスチン6錠36mg分3アデノシン三リン酸300mg分32.抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン1錠 めまい時頓用 1日3回まで 2) メニエール病のめまい発作に伴う急性感音難聴の治療めまいに随伴した急性感音難聴に対する治療を行う場合には,突発性難聴の治療と同様に行う。突発性難聴に対する治療法として,ステロイド薬の全身投与が世界中で広く使用されており,2014〜2016年度「難治性聴覚障害に関する調査研究班」の実施した疫学調査においても,8割以上の症例でステロイド全身投与が行われていた 1)。ステロイド全身投与の有効性に関する無作為化比較試験(randomized controlled trial,RCT)は,これまで多数施行されてきたが評価はさまざまで48 第5章 メニエール病の治療
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