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第7章Meniett ®により治療前後でめまい頻度が有意に低下したことから,めまいに対して有効であること,また治療前後で純音聴力検査における聴力閾値が有意に改善したことから,聴力に対しても有効であったことを報告している 4)。Zhang, et al., 2016によるメタアナリシス(2つの無作為化比較試験と12の観察研究の345例を対象)では,めまいに関して頻度の有意な減少と生活の質(quality of life,QOL)の改善が認められ,Meniett ®の治療効果が約18カ月継続する可能性があるが,一方,聴力に関する効果は不明であると報告している 5)。Meniett ®を用いた中耳加圧治療の無作為化比較試験は6編が報告されている 6-11)。Densert, et al., 1997は,治療群21例,プラセボ群18例に対して1回の治療前後にめまい,耳鳴,耳閉感と蝸電図の変化を比較した 6)。治療群ではプラセボ群に比べて蝸電図の改善はみられたが,自覚症状には差を認めなかった。Odkvist, et al., 2000は,治療群31例,プラセボ群25例に対して2週間の治療期間で,めまい,耳閉感,耳鳴,日常生活の支障度を比較した 7)。治療群では,自覚症状のすべてで治療後は治療前に比べて有意に改善していたが,プラセボ群では変化を認められなかった。Russo, et al., 2017は,治療群49例,プラセボ群48例に対して6週間の治療期間で,めまい,日常生活の支障度を検討した。治療群とプラセボ群の間にめまい,日常生活の支障度に差を認めなかった 8)。Thomsen, et al., 2005は,治療群20例,プラセボ群20例に対して2カ月の治療期間でめまい,日常生活の支障度,難聴,耳閉感,耳鳴を比較した 9)。治療群はプラセボ群に比べて,めまい重症度と日常生活の支障度に改善を認めたが,難聴,耳閉塞感,耳鳴に有意な改善はみられなかった。Gates, et al., 2004は,治療群34例,プラセボ群33例に対して4カ月間の治療期間でめまい,日常生活の支障度,純音聴力検査を比較した 10)。治療群ではプラセボ群に比べてめまい頻度減少,日常生活の支障度の改善が認められたが,聴力に関する効果はみられなかった。Gürkov, et al., 2012は,治療群38例,プラセボ群36例に対して4カ月間の治療期間で,めまい重症度,日常生活の支障度,他覚的所見(平均聴力レベルと温度刺激検査の緩徐相速度)を比較した 11)。治療群ではプラセボ群に比べてめまい重症度の改善が認められたが,平均聴力レベル,温度刺激検査の緩徐相速度に関して変化はみられなかった。すなわちMeniett®による中耳加圧治療のめまい制御については,1回の治療前後では効果がなく,2週〜2カ月の治療期間ではめまい制御に有効が2編,無効が1編,治療期間が4カ月ではすべての無作為化比較試験でめまい制御に有効であった。メニエール病に対してMeniett ®による中耳加圧治療を行いめまいに対する治療効果を期待する場合には,4カ月以上治療を継続する必要があると考えられる。難聴・耳鳴に関する有効性に関しては,検討した無作為化比較試験5編中4編において確認されなかった。一方,Meniett ®を用いた中耳加圧治療の無作為化比較試験のSR12-16)では,めまい,難聴,耳鳴いずれの症状に関しても有効なエビデンスは示されていない。最新のコクラン・レビュー 12)では,3カ月以上経過観察された研究に限定し,プラセボ(圧波なしあるいはわずかな圧波を送るプラセボ装置と鼓膜換気チューブ挿入術)を対象とした3つの無作為化比較試験の238例におけるSRが行われた。中耳加圧治療は,3カ月〜6カ月未満でめまいの頻度をわずかに改善させる可能性(月平均−0.84日)があるが,めまい頻度の実際の変化に関するエビデンスの確実性は非常に低いとしている。聴力への効果に関するエビデンスは非常に不確実であり,耳鳴への治療効果に関するエビCQ7 メニエール病に中耳加圧治療を行うことは有効か?  89

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