CQCQ1 1 メニエール病に抗めまい薬を使用することは有効か?推奨ベタヒスチンは,短期間(3カ月以内)で高用量の投薬によりめまいに有効性を示す根拠が得られているので,副作用に留意したうえで使用することを非常に強く推奨する。【推奨の強さ1,エビデンスレベルA】ベタヒスチンの長期間投薬の効果に関して十分な根拠が得られていないので,使用することの可否を判断することが困難であり,現時点ではそのことに留意したうえで使用することを提案する。【推奨の強さ2,エビデンスレベルB】ジフェニドールの有効性を示す質の高い根拠は得られていないが,3週以内でめまいを抑制する可能性があり,副作用に留意したうえで使用することを提案する。【推奨の強さ2,エビデンスレベルC】●背景・目的薬物治療は生活指導と同様にメニエール病のファーストラインとして行われる。なかでも抗めまい薬はめまい症状を抑制することを目的とする薬物であるが,メニエール病に対してもベタヒスチンとジフェニドールが抗めまい薬として頻繁に用いられている 1-3)。べタヒスチンは抗ヒスタミン様の作用(H1受容体部分作動薬,H3受容体拮抗薬)を有する,ジフェニドールは,抗コリン様の作用を有する薬物である 4)。メニエール病では急性期と慢性(間歇)期に病期が分かれ,それぞれにおける薬物治療の目的や用法も異なる。本ガイドライン2020年版ではベタヒスチンにはエビデンスを示す報告があり,急性期において推奨される薬物とされている 5,6)。一方,ジフェニドールに関するエビデンスを示す報告は乏しく,推奨度も低い。また,「5-1.メニエール病の治療」(p.48)の項で取り上げているアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate,ATP)についても,治療効果に関するエビデンスに乏しいことを付記する。本CQでは,2018年4月以降の新しい文献を追加採用し,メニエール病に対する抗めまい薬の有効性と安全性について検討する。●解説・エビデンスメニエール病に対しては抗めまい薬としてべタヒスチンとジフェニドールが用いられている。メニエール病は急性期と慢性(間歇)期に分かれ,それぞれの病期における薬物の効果が検証されている。68 第7章 クリニカルクエスチョンClinical Question(CQ)
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