第3章99Ⅲ.人工内耳植込後の療育Ⅲ.人工内耳植込後の療育1.早期植込例のMappingの手法2.Mappingの有効性の確認解説人工内耳(CI)の調整(Mapping)の基本は「安全性」と「有効性」が両立していることである1)。通常,Mappingの手順は電極からの電気刺激によって生じる音の大きさ,高さ,音色など個々の聴覚心理的印象をMappingをしている言語聴覚士が対象者の反応や表現から捉え,個々の電極からの電荷量を調整しmapに反映させながら行う。音に対してまだ検知,検出レベルの幼児においては,条件詮索反応聴力検査(condi-tionedorientationresponseaudiometry:COR)や遊戯聴力検査と同様の手法を用いて,CIからの音刺激に対し聴知覚の有無のほか,音の快・不快(うるさい),聴知覚そのものを「きこえた」と意味づけしながら行う2)。音入れ後間もない頃には,電極からの刺激に対して,児の動作が止まる,Mappingをしている言語聴覚士を見る等,刺激に対する行動反応が見られることがある。その際,児が感じた刺激が,児にとって意味のあるものとなるよう,言語聴覚士や保護者等は表情(笑顔)や耳に手を当てる動作を児に返しながら,児の行動反応を強化し,CIからの「刺激」を感じることが「音のきこえ」の感覚につながるよう意味づけを行っていく。一方でCIからの音刺激により「不快」な状況が生じることにより,CI装用の拒否につながることがある。例えばMappingの電気刺激に対して表情が硬くなる,泣き出すなどの反応には「不快」が表れており注意が必要である。乳幼児では全電極を1回のセッションでMappingすることは難しく,数電極を選びMappingし,次回にまた他の電極をMappingするという手法をとることが多い。また,マイクをオンにし全電極から電気信号が送られる「ライブボイス」でのMappingで,太鼓や鈴などの楽器,音が鳴るおもちゃなどを使用し,音への興味を育てながら反応を確認していく。特に早期植込例においては,手術時年齢が低いがために術前に補聴器を装用する期間が短いため3),Mappingをしながら音への反応を引き出し,それが音への興味や声が聞こえることへの楽しみにつながるような介入が必要である。小児CI装用例において,調整されたmapによる音声プログラムが適切な補聴効果をもたらしているかどうかを確認するため,音場における装用下閾値(幼児の場合はCORや遊戯聴力検査を用いて),ことばの理解ができ,発話ができるようになった幼児では単音節・単解説早期植込例のMappingの手法と留意点Ⅲ-1
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