第2章51Ⅳ.人工内耳植込後の療育Ⅳ.人工内耳植込後の療育背景CIは,当初は18歳以上のみを対象としていたが,1990年には米国で子どもにも認可され,その前後より先天性あるいは言語習得前失聴の子どもに対しても,時間はかかるものの効果があることが次第に知られるようになり1,2),子どものCIの例数も急激に増加し始めた。1990年代には子どもの高度難聴に対するCIの効果に関する報告が多くみられたが,特にCI後に聴覚を活用する方法での療育の効果が報告され3),現在は世界的に多くの施設で聴覚活用療育法の代表であるAuditory-verbaltherapy(AVT)が行われている4,5)。しかし,AVTと視覚活用療育法(手話)との優劣に関する疑問に答えられるエビデンスがあるかは明らかではない。益と害の評価患者が受ける利益:聴覚活用療育法では音声言語の獲得が最大限促進される。患者が受ける害・不利益:家族間のコミュニケーションの確保における問題や,後に視覚活用療育法から聴覚活用療育法に変更する場合に脳の可塑性の問題などが生じうる。益と害のバランス:聴覚活用療育法による益は害より明らかに大きい。患者の希望:十分な説明と同意が必要である。例外規定:療育者の協力が得られない,適切な療育法が理解されないなど難聴児の環境が適さない症例。解説難聴児に対する療育法は,聴覚活用療育法の代表的な手法かつ最もポピュラーな難聴児への療育法であるAVT,手話,または両者の併用(Totalcommunicationtherapy:TCT)に大きく分けられる。AVTは1993年にGoldbergらが初めて報告したもので,他の療育法(特にauditory-oraltherapy:AOT)との違いは,児童や両親・介護者がその場に必ずいて推奨人工内耳(CI)装用後の音声言語獲得のためには,聴覚活用療育法が優れる。推奨の強さ強い推奨聴覚活用療育法と視覚を活用する療育方法CQ(視覚活用療育法)とどちらが音声言語獲得により有効かⅣ-1エビデンスの質B
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