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第2章35Ⅲ.難聴診断後の療育CQ人工内耳適応決定の適切な時期はいつかⅢ-1Ⅲ.難聴診断後の療育背景日本では,1998年に子どもに対してCIが保険適用となり,日本耳鼻咽喉科学会は適応基準を「2歳以上,両側100dB以上」とした。2000年から新生児聴覚スクリーニングが導入され始め,先天性難聴の早期発見・早期療育が可能となった。2006年に子どもの適応基準が「1歳6カ月以上,両側90dB以上」に改訂され,2014年には「原則1歳以上,両側90dB以上」に改訂された。一方,欧米では現在1歳未満のCI手術も増えてきている。良好な音声言語を獲得する方法として,より早期のCI手術が世界的に期待されている。益と害の評価患者が受ける利益:良好な音声言語の理解と表出が可能となる。患者が受ける害・不利益:低年齢児に対するCI手術の侵襲と手術に伴うリスク。ただし,1歳未満であっても手術合併症が増えるという報告はない。益と害のバランス:適切な聴力検査で重度難聴と診断され,適切な補聴器(HA)装用でも十分な装用効果が見られない場合,患者が受ける利益は良好な音声言語の理解と表出であり,益は害よりはるかに大きい。患者の希望:十分な説明と同意が必要である。例外規定:内耳無形成などCI手術が困難な場合には行わない。解説CI手術年齢が早いほどその後の言語発達が良好であるという報告は,以下のように多数ある。Dunnらは,4歳までにCI手術を受けた難聴児83人の長期観察研究で,2歳までにCIを行った子どもの方が,2歳以降にCIを行った子どもと比較して,5歳時の音声言語の理解で有意に優れていることを示した。また7歳時での言語力においても,2歳までにCI推奨重度難聴児が良好な音声言語を獲得するために,1歳までに人工内耳(CI)適応の検討を行うことを推奨する。推奨の強さ強い推奨エビデンスの質B

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