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本GLは,2019年度厚生労働科学研究費補助金「聴覚障害児に対する人工内耳植込術施行前後の効果的な療育手法の開発等に資する研究(19GC1007)」で組織されたGL作成委員会により作成され,特定の団体・企業からの支援を受けているものではない。利益相反の開示(表1-2)に関しては,GL作成委員会構成員全員が「一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会利益相反に関する指針2020年版」および「同細則」に従って申告し,開示した(http://www.jibika.or.jp/members/iinkaikara/pdf/about_coi_rule.pdf)。ヒトでは胎生後半に音に対する反応がすでに見られ1),出生時にはほぼ成人と同等に聴こえている2)。大脳の聴覚の感覚野のシナプスは3歳半まで増加してその後減少する。聴覚による音声言語の獲得の過程はせいぜい2歳半までといわれている3)。またその時期を過ぎて長く聴こえない状態が続くと,音声言語獲得が難しくなることが知られている(p.74:解説Ⅰ-1参照)4)。この現象に深く関連した,次のような典型的な報告例が存在する5)。幼小児期から主に手話,読唇など視覚活用のみでコミュニケーションをとっていた言語習得前失聴小児が8歳時に人工内耳(CI)手術を受け,その後長年にわたりCIを使って聴覚での言語理解を試みたが進歩はなかった。術後7年(15歳)時に脳機能画像検査(Positronemissiontomography:PET)を行ったところ,本来聴覚刺激から言語を理解すべき側頭葉の聴覚連合野がCIを通して言葉を聞いても(聴覚刺激)活動せず,検査中の検者の口元を見た(読唇)ときに明確な活動が見られた。このことから,本症例は8歳に至るまで聴覚活用がほとんど行われず,そのため聴覚連合野が視覚刺激によって言語を理解する役割に変わってしまい,そのまま音声言語習得の臨界期を過ぎてしまったと考えられた。すなわち上記のように小児期の音声言語習得の臨界期以降は脳の機能の可塑性は失われて,再びCIなどで聴覚刺激が大脳に到達するようになっても言語理解が難しくなることを意味する。これらの事実が,難聴幼少児への介入が診断確定後早ければ早いほどCIなどで音声言語が良好に獲得できる理由であり6,7),また世界的に子どものCI手術の低年齢化が進んでいる理由でもある。3.資金提供者・スポンサー・利益相反4.前書き61)ヒトの聴覚の発達と,音声言語習得の臨界期について第1章作成の経緯と概要表1-2GL作成委員会構成員の利益相反Med-ElGMBH寄附講座「人工聴覚器講座」1件メドエルジャパン共同研究セオリアファーマ顧問1件1件

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