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はじめに末梢性顔面神経麻痺の重症度評価のための電気生理学的検査法として,神経興奮性検査(nerveexcitabilitytest:NET)とエレクトロニューロノグラフィー(electroneuronography:ENoG)が汎用される。いずれも茎乳突孔外の顔面神経を,双極電極を用いて電気刺激して行う検査であり(図1),評価者の目視によって表情筋の運動を捉えるのがNET,顔面表情筋上に置いた皿電極から筋電図を記録するのがENoGである。したがって両者ともに,膝部付近から始まるWaller変性が刺激部位に到達する前の麻痺発症早期には正診率は低く,到達後とされる麻痺発症後10〜14日の測定結果の信頼性が高い。1神経興奮性検査NETは茎乳突孔から側頭骨外に出た顔面神経を乳様突起直下で経皮的に刺激し,顔面表情筋の収縮を肉眼で確認し,筋収縮を起こす電流の最小閾値を患側と健側で比較する方法である。筋電図の描出は行わないため記録電極装着が不要であるのに加えて,最小閾値を探る検査であるため,次に述べるENoGと比較して刺激時の疼痛が少ないのが利点である。現在主に使用されている予後判定基準は,持続時間0.3msec,1Hzの矩形波を用いて刺激した際の最小閾値の左右差が0.4+/−0.2mAだと正常範囲,3.5mA以上で神経変性ありと診断する。さらにこの左右差が20mA以内であれば部分変性,20mAを超える場合は完全変性と診断される。また,先述したように側頭骨外での検査となるためNETは10日目以前の正診率が低いとされており,より早期の予後診断には不向きである。加えて検者の目視に頼るため,顔面表情筋以外の筋運動に惑わされやすく注意を要する。よって最小閾値を求める検査ではあるものの,閾値上まで刺激電流を上昇させ,この増加に比例して目的の表情筋運動が増大することを確認することが望ましい。また後述のENoGと同様に,健側で先に施行して表情筋の運動を確認しておくとよい。2エレクトロニューロノグラフィーEsslenとFischにより開発された方法で,Waller変性をより定量的に測定することができる。電気生理学的検査(神経興奮性検査,エレクトロニューロノグラフィー)顔面神経15

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