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はじめに耳鼻咽喉科では,上気道という微生物の侵入門戸となりやすい領域を対象とするため,様々な感染症を扱う。耳鼻咽喉科領域の主な感染症と主な原因微生物を表1にまとめた。これらの感染症の診断と治療のためには原則的には原因微生物を検出する必要がある。疾患や原因微生物により,検体採取法や施行可能な検査は異なるが,耳鼻咽喉科領域の感染症の検査は,塗抹鏡検,培養検査で直接微生物の存在を確認する方法,遺伝子検査で微生物の核酸を検出する方法,抗原検査,抗体検査などがある。培養可能な一般細菌に関しては,塗抹鏡検,培養検査が基本となる。培養困難な細菌やウイルスの検出には,遺伝子検査が用いられ,耳鼻咽喉科領域では抗酸菌などで行われる。抗原検査は,イムノクロマト法が主流であり,耳鼻咽喉科領域ではA群溶血性連鎖球菌,肺炎球菌,インフルエンザウイルス,RSウイルス,アデノウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,単純ヘルペスウイルスなどで使用可能で,迅速診断としても有用なことが多い。抗体検査は,血清を用いて行う検査で,耳鼻咽喉科に関連するものでは,EBウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,単純ヘルペスウイルス,ムンプス,麻疹,風疹などで用いられる。本項では,耳鼻咽喉科で遭遇する頻度はそれほど高くはないが,忘れてはいけない疾患であり特殊な検査が含まれる,結核と破傷風に関する検査について特に述べる。1結核結核の感染は,結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)を排菌する患者から咳などで飛散した空気中に浮遊する結核菌を吸入することにより起こる。耳鼻咽喉科で遭遇し得る結核は,中耳結核,咽頭結核,喉頭結核,頸部結核性リンパ節炎などであるが,頻度は高くない1,2)。しかし,喀痰の結核塗抹検査で陽性の肺結核,咽頭・喉頭結核,気管・気管支結核の場合,感染源となる。空気感染による集団感染や院内感染の恐れがあるため,感染対策上からも早期の正確な診断,さらには感染対策の知識を要する。耳鼻咽喉科を受診する上記のような結核症例では,特異的な所見に乏しいことが多い(図1a.喉頭結核,b.中耳結核,c.上咽頭結核の肉眼所見)1,2)が,常に認識しておくべきである。結核は,感染症法の2類感染症であり,診断した場合,医師は最寄りの保健所にただちに届け出る必要がある。感染症に関する検査感染症51

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