る。MPTは発声持続の最大能力を表す指標であり,個人差が大きく,また日常生活では必ずしも最大能力まで発揮する必要はないことから,多少低値を示しても異常とまではいいきれない。逆に正常範囲であっても病前に比べ低下している可能性を否定できないことから,測定値の解釈には注意を要する。一方,MPTが10秒未満になると患者から「声を出すと疲れる」「息が続かない」といった訴えが聞かれることが経験的によく知られている。そのため男女ともにMPT10秒未満は病的とみなすのが一般的である2)。2声の高さ─話声位と声域─声の高さは発声時の声帯振動数によって決まる。多くの喉頭疾患では,声帯の質量の増大や硬化により声帯振動が遅くなり,話声位が低下するとともに声域の上限が低下し,声域の狭小化を生じる。一方,話声位が異常に高くなる病態はさほど多くないが,代表的なものに変声障害,パーキンソン病があり,加齢性声帯萎縮においても話声位の上昇がみられることがある。声域が多少狭小化しても日常生活上はさほど問題とならないこともあるが,歌唱の際,特に職業的歌手などでは声域の狭小化や特定の音域における発声困難が問題となることがある。声域の測定はこのような患者にとって特に重要である。21827.50AoBoC1D1E1F1G1A1B1C2D2E2F2G2G2G2G1G1G2G2G4G4B4B4E3E3E2E2G3G3G5G5BbBbBb4Bb4Bb2Bb2D3D3E5E5Bb3Bb3C#4C#4C#2C#2D5D5G#2G#2D#3D#3D#5D#5A2B2C3C3C3C3C3C4C4A5A5D3E3F3G3A3B3C4D4E4F4G4A4B4C5D5E5F5G5A5B5C830.8632.7036.7141.4143.6549.0055.0061.7365.4173.4282.4087.3098.00110.00123.47130.81146.84164.81174.61196.00220.00246.94261.63293.67329.63349.23392.00440.00493.88523.25587.33659.25698.46783.99880.00987.77〜〜4186.00女性女性平均値平均値棄却限界棄却限界標準偏差標準偏差下限下限下限下限上限上限話声位話声位話声位話声位上限上限男性男性周波数(Hz)音 名図1健常成人の話声位と声域健常成人における話声位の平均値は男性C3(約130Hz),女性B♭3(約230Hz)であり,正常範囲(棄却限界)は男性G#2〜D#3(約100〜160Hz),女性G3〜C#4(約200〜280Hz)である。すなわち,男性の話声位は女性に比べて約1オクターブ(12半音)低い。声域の下限および上限の平均値は,男性C#2(約70Hz)およびD5(約590Hz),女性C3(約130Hz)およびG5(約780Hz)である。すなわち平均的な声域は男性約3オクターブ,女性約2.5オクターブである。また,男女ともに話声位は声域の中央ではなく下限に近い音高である。声域の狭小化について,異常と判断する境界値(棄却限界)は男性では下限がG2(約100Hz)より高いもの,および上限がG4(約390Hz)より低いもの,女性では下限がG3(約200Hz)より高いもの,および上限がB4(約490Hz)より低いものである。
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