37132T
26/30

はじめに発声持続時間の検査は発声の能力の一側面を簡便に知る方法としてよく行われている。測定するのは最長発声持続時間(maximumphonationtime:MPT),すなわち被検者に最大吸気を行わせ,一定の高さおよび大きさで,できるだけ長く母音発声を行わせた時の持続時間である。また,声の高さの検査では話声位すなわち被検者が習慣的に用いている声の高さ,および声域すなわち発声し得る最も低い音から最も高い音までの音域を測定する。MPT,話声位および声域は機器を用いて測定することもできるが,ここでは聴覚心理的検査について述べる。1最長発声持続時間(maximumphonationtime:MPT)MPTは声の持続の最大能力を表す指標であり,日常生活に必要な発声の能力が障害されているか否かを知る手掛かりとなる。また,この検査で使用される呼気の総量は肺活量に依存することから,肺活量を測定してMPTで除することにより発声時平均呼気流率(発声中に声門を通過する1秒あたりの呼気量,meanairflowrate:MFR)の近似値を得ることもできる。MFRは主として発声時の声門閉鎖の程度に依存することから,MPTは声門閉鎖不全を主病態とする疾患において治療の適応判断や効果判定に有用な指標である。声門閉鎖不全があるとMPTは短縮し(MFRは上昇),声門閉鎖不全が改善するとMPTは延長(MFRは下降)する。検査課題は母音「ア」とする。「できるだけたくさん息を吸って」「楽な高さ,楽な大きさで」「できるだけ長くアーと言ってください」という教示を与え,発声持続時間をストップウォッチ等により1/10秒の単位で測定する。3回続けて測定を行い,最大値を採用する。声の高さを記録しておくことが望ましい1)。なお,本検査は一種の負荷試験であるから,被検者が精一杯頑張ってくれることが適正な測定値を得るために不可欠である。したがって,あらかじめ検査法についてよく説明し,特に,途中で止めずに最後まで発声の努力を続けることを理解させることが必要である。澤島1)によれば,健常成人のMPTの平均値は男性約30秒,女性約20秒である。臨床上は延長よりも短縮の方が問題になるが,短い方の正常範囲(棄却限界)は男性約14秒,女性約9秒であ発声持続時間と声の高さの検査音声45

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る