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はじめに咽頭期嚥下は,咽喉頭粘膜からの知覚入力によって惹起される反射運動で,舌骨上筋群,咽頭収縮筋,輪状咽頭筋等,多数の嚥下関与筋が短時間に極めて巧妙なタイミングで収縮や弛緩を行うことにより遂行される。この運動は,延髄に存在する嚥下のパターン形成器(centralpatterngener-ator:CPG)にてコントロールされているため,その運動の時間的・空間的順次性はほぼ一定で極めて再現性が高い。嚥下反射では,軟口蓋挙上,舌背挙上,舌骨・喉頭挙上,咽頭収縮,upperesophagealsphincter(UES)の弛緩と再収縮の一連の動作が生じ,上咽頭から中咽頭,下咽頭,UESへの協調的かつ連続的な嚥下圧発生と,咽頭内圧の上昇にほぼ同期した輪状咽頭筋の弛緩が起こる。嚥下圧検査は,軟口蓋から頸部食道まで1cm間隔で内圧測定することで,嚥下関連筋の活動の結果もたらされる咽頭や食道の内圧変化とその時間的推移を定量的に評価し,嚥下圧の発生パターンや,UESの機能評価を行うことができる唯一の方法である。嚥下圧検査の測定方法は,stationpull-through法や引き抜き圧曲線法による従来法と,高解像度マノメトリ(high-resolutionman-ometry:HRM)による方法とがある。ここでは,近年世界的に普及しつつあるHRMによる嚥下圧検査の読み方について解説する。1高解像度マノメトリ(high-resolutionmanometry:HRM)HRMシステムは,圧センサーを搭載したHRMカテーテル,マノメトリックモジュール,モニターからなる(図1a)。多数の微小な圧センサー(機種によっては36個)が1cm間隔で搭載されているHRMカテーテル(図1b)を,鼻腔から頸部食道まで挿入して(図1c)嚥下すると,1回の嚥下で軟口蓋から頸部食道まで各部位での嚥下圧を測定することができる。図2aは,各部位における嚥下圧波形,図2bは,圧の変化を色で表示した圧トポグラフィーである。縦軸が前鼻孔からの距離,横軸を時間で示している。咽頭期嚥下反射が惹起されると,上咽頭からUESにかけて連続的な嚥下圧が発生するため,圧トポグラフィーでは,右肩下がりの陽圧が観察される。嚥下圧値は,個人間,個人内でもばらつきはあるが,健常例では100mmHg以上であることが多い。また,安静時には輪状咽頭筋が収縮し陽圧帯を形成しているUESが,嚥下反嚥下圧検査(高解像度マノメトリ)嚥下42

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