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2症例と診断のポイント症例:74歳男性,下咽頭表在癌下咽頭左梨状陥凹に粘膜病変を認める。図1に通常光観察とNBI像を示す。図1aの通常光観察では下咽頭粘膜に境界不明瞭に赤色調が強い部分を認めるのみである。図1bのNBIでは通常光における赤色調の部分が茶褐色調に認められBrownishareaと呼ばれる。また,粘膜に無数の点状のdotを認める。これは粘膜表層の微細血管の拡張を見ているものである。これらの所見はいずれも悪性腫瘍を強く疑わせる所見である。本例においても生検にて扁平上皮癌が確認されたため,全身麻酔下によるELPS術を施行した。術中術後の写真を図2に示す。これらは耳鼻咽喉科用のファイバースコープではなく,より解像度の高い上部消化管用のファイバースコープ像となる。図2aでは図1aで認められた境界不明瞭な赤色調の部分に,小さなdotが認められるのがわかる。図2bはNBI画像であるが,図1bで認めたdotが実は螺旋状に蛇行する新生血管であることがわかる。手術時には佐藤式湾曲型喉頭鏡を用いて喉頭を前方に挙上するので,頸部食道入口まで観察することが可能である(図2c)。NBI所見を参考に針型電気メスにて切離線をマーキングする(図2d)。この症例では切離面を人工被覆材で覆い,フィブリン糊で固定して手術終了とした(図2e)。36NBIによる癌の診断,表在癌の早期診断177頭頸部腫瘍図1下咽頭左梨状陥凹癌(★印は左披裂軟骨,▲が指すのは発赤の範囲)a.通常光観察:粘膜の発赤を認める。b.NBI観察:Brownishareaを認める。

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