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はじめにNBIはオリンパス社が開発した狭帯域光観察(NarrowBandImaging:NBI)の略であり,今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域ではなくてはならない手段の一つとなっている。NBIは血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの波長の光を照射することにより,粘膜表層の毛細血管,粘膜微細模様の強調表示を実現している。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の観察では,ヨウ素の散布が困難であることからその代替法として普及している。本検査法の発展により,これまでの通常光検査では拾うことができなかった,表在癌,早期癌が見つかるようになり,頭頸部表在癌の診断治療は大きく発展した。ここで頭頸部表在癌の定義について述べておく。「頭頸部癌表在癌取扱い指針」によると「頭頸部表在癌とは粘膜筋板のない頭頸部領域の粘膜上皮由来の上皮性悪性腫瘍を対象とし,上皮内,または上皮下層にとどまる(固有筋層への浸潤を認めない)腫瘍をさし,頸部リンパ節転移の有無を問わない」とされている。1概要と注意点NBIの出現により観察方法にも様々な工夫が行われるようになった。中咽頭に関しては経口的にファイバースコープを挿入し観察を行う。下咽頭に関しては被験者に頭部を強く前屈させるKillianの頭位を取らせることで輪状後部や後壁,さらには頸部食道入口部までが観察できるようになる。また,被験者に口を閉じて頬を膨らませさせるValsalva法の併用も有用である。中・下咽頭癌の危険因子として古くから飲酒,喫煙が挙げられているが,近年の研究ではその他にも痩せ型体型,野菜果物摂取不足,赤血球MCV増大,食道多発ヨード不染帯,口腔・咽頭・食道メラノーシス,頭頸部癌・食道癌の既往,アルコール脱水素酵素2(ALDH2)のヘテロ欠損型などが報告されている。ALDH2ヘテロ欠損型については「ビール1杯程度の飲酒で顔が赤くなりますか?あるいは,飲み始めた頃には赤くなりましたか?」という質問で「はい」と答えればALDH2ヘテロ欠損型と判定できる(フラッシング陽性)。これらの症例では特に慎重に観察することが重要である。本項では通常光観察とNBI画像を対比しつつ下咽頭癌症例を供覧し,診断のポイントに関して解説する。NBIによる癌の診断,表在癌の早期診断頭頸部腫瘍36

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