37132T
12/30

はじめに「鼻閉」は最も頻度の高い鼻症状の一つであり,多くは鼻粘膜の腫脹を伴うアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などが原因となる。しかし,患者の訴える「鼻閉」は感覚的な症状であり,必ずしも鼻粘膜の腫脹を伴うものではなく,萎縮性鼻炎でも鼻閉感を生じる。そのため,鼻閉の診断には客観的な鼻腔通気性の評価が不可欠である。現在,客観的な鼻腔通気性の評価には,鼻腔抵抗を測定する生理学的検査の鼻腔通気度検査と,鼻腔断面積・鼻腔容積を測定する形態学的検査の音響鼻腔計測検査が主に用いられている。1鼻腔通気度検査(rhinomanometry)鼻腔抵抗を測定する検査であり,保険診療上の適応は,①鼻閉の原因となる鼻副鼻腔疾患の手術適応の決定や術後の経過観察,②睡眠時無呼吸症候群の診断,③神経性(心因性)鼻閉症の診断である。その他,臨床では鼻副鼻腔疾患の薬物治療の適応の決定や効果判定にも応用されている。検査法の原理は,安静呼吸時の鼻腔抵抗,鼻腔前後の圧差,鼻腔気流量の三者の関係が,電気回路のオームの法則(電気抵抗R=電圧V電流I)に準ずることに基づいている。鼻腔前方の圧と鼻腔気流量の測定は容易であるが,後鼻孔の圧の測定に工夫が必要であり,その測定法によってアンテリオール法とポステリオール法に大別される。鼻腔通気性は,体位や環境などの様々な因子の影響を受けるため,正確に測定するためには,測定の前は少なくとも10分以上安静を保ち,環境に順応させる必要がある。アンテリオール法は,片側ずつ鼻腔抵抗を測定する方法であり,対側の前鼻孔から後鼻孔の圧を導出する1)。アンテリオール法は,さらにオリーブ状のノズルを用いるノズル・アンテリオール法とフェイスマスクを用いるマスク・アンテリオール法に分けられる。アンテリオール法は,片側の鼻腔抵抗を測定する方法であるため,両側の総鼻腔抵抗は並行抵抗のオームの法則(1R=1R1+1R2)の計算式で算出された値である。ポステリオール法は,後鼻孔の圧を口腔から導出する。アンテリオール法と異なり総鼻腔抵抗を測定でき,また片側の前鼻孔をテープで塞げば片側の鼻腔抵抗も測定できる。しかし,10人のうち1〜2人は口腔からの圧の導出が上手くできないという欠点がある。アンテリオール法と異なり,鼻腔通気度検査鼻科29

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る