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気管切開は嚥下機能に影響を及ぼすか?
要 約
嚥下障害患者では下気道管理の面から気管切開が有用な場合もあるが,気管切開自体は
一般に嚥下動態に悪影響を及ぼす。このため,気管切開を有する嚥下障害患者では,一
方弁の使用や気管切開孔閉鎖などを検討することが勧められる。
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背 景
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気管切開は,長期呼吸管理目的だけでなく,重度の誤嚥や嚥下性肺炎に対する下気
道管理の手段としても施行される。また,前医で気管切開が行われ気管切開孔を有す
る嚥下障害患者の診療を,耳鼻咽喉科医が求められることは少なくない。このような
場合,耳鼻咽喉科医には嚥下機能の評価だけでなく,適切な気管切開孔管理に関する
助言を行うことも求められる。
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解 説
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気管切開および気管カニューレが嚥下機能に与える影響について,悪影響はないと
する一連の報告
1-3)
も存在するが,過去の研究の多くは気管切開によって嚥下機能が悪
化する,と結論づけている。
気管切開患者に対しては,嚥下機能の観点からカフの脱気や一方弁の使用が推奨さ
れ,症例によっては気管切開孔閉鎖の可否について検討することが勧められる。
Seidlら
4)
は,呼吸状態は安定しているが意識障害のある気管切開患者では,気管カ
ニューレを抜去することで単位時間あたりの嚥下回数が増加した,と報告した。
気管切開が嚥下機能に与える影響としては,①喉頭挙上の制限,②カフによる頸部
食道の圧迫,③気道感覚閾値の上昇,④声門下圧維持不能,⑤喉頭閉鎖における反射
閾値上昇,が挙げられている。①②の根拠については,多くの場合Feldmanら
5)
や
Bonanno
6)
の報告が引用されている。彼らは,気管切開によって舌骨,喉頭の前上方へ
の挙上運動が制限されることを報告した。③④⑤は,相互に関連のある項目としてと
らえることが可能である。気管切開によって下気道は大気に開放されるため,声門下
圧の維持が困難となり経喉頭呼吸も不可能となる
5)
。これらの変化は,誤嚥につながる
とされる。
また,実験的に気管切開によって喉頭閉鎖反射閾値が上昇し,その潜時は不安定と
なることが証明されている
*7)
。
一方弁の使用は,これらの問題を軽減させ嚥下機能を改善させることが報告されて