A 解 剖
7
Ⅰ
章
耳
水平に位置しているため,上咽頭からの炎症が中耳へ波及しやすくなっています
。これが急性中耳
炎や滲出性中耳炎が就学前の幼小児に多い理由の一つです。
また,耳管内部は
粘膜(線毛円柱上皮)で覆われており
,咽頭へ向かう粘膜上皮の線毛運動によっ
て不要物質の排除が行われています。
4
-
4
乳突洞 mastoid antrumと乳突蜂巣 mastoid cells
(図Ⅰ-5c)
鼓室上方から後方にある腔で,乳突洞は生下時から存在し,乳突蜂巣は耳管からの空気の交通や
粘膜上皮の呼吸によって生後発達します。つまり,
幼小児期に中耳炎をくり返すと乳突蜂巣の発達
が悪くなります
(p.40参照)。
5
内 耳 inner ear
(図Ⅰ-1,6,7)
内耳は側頭骨内にあり複雑な構造をしているので
迷路
labyrinthとも呼ばれ,側頭骨内に形成さ
れた
骨迷路
という空間(図Ⅰ-6)とその中にある
膜迷路
(図Ⅰ-7)からできています。両者の間は外
リンパ(液),膜迷路の中は内リンパ(液)で満たされています。外リンパは蝸牛小管によって髄液
と交通していますが,内リンパは後述する血管条で分泌され,内リンパ管を介して脳硬膜内にある
内リンパ嚢に通じています。
膜迷路によって蝸牛,前庭,三半規管が交通
しています。外側は前庭
窓と蝸牛窓によって鼓室と境され,内側には蝸牛神経と前庭神経があり,内耳道につながる構造を
しています。
5
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1
蝸 牛 cochlea
(図Ⅰ-1,6,7,8)
蝸牛は内耳の前下方にあるらせん状に
2回転半した管
(
基底回転,中回転,頂回転
という)で,
回転軸は蝸牛軸と呼ばれ,蝸牛神経線維の通り道
となっています。蝸牛回転を断面でみると
図Ⅰ-8aのように,3つの部屋に分かれており,内側から
鼓室階
scala tympani,
中央階
(
蝸牛管
cochlear duct),
前庭階
scala vestibuliといい,中央階が膜迷路に相当し内リンパで満たされてい
ます。前庭窓からつながる部分は前庭階,蝸牛窓につながる部分は鼓室階と呼ばれ,蝸牛頂で両者
前(上)半規管
外側半規管
後半規管
蝸牛窓
蝸牛
前庭窓
前庭
図Ⅰ-6 内耳骨迷路
前(上)半規管
外側半規管
後半規管
内リンパ囊
蝸牛窓
蝸牛管
球形囊
前庭窓
卵形囊
図Ⅰ-7 内耳膜迷路